君去りし後

 

或る夜の出来事*1のクローデット・コルデールが、母親役。「或る夜の〜」でも感じていたがアメリカの高峰秀子のように感じる。活躍期間長くて、ちょっとコミカルにぽんぽんいう役もしっとりした役もハマる。

タイトルがシリアスぽくてしょっぱなから愁嘆場ではという危惧があり観るのに時間がかかったが、さすがみせる技術に長けているアメリカ映画。夫が従軍したクローデット・コルデールの沈んだ心のうちからさっと娘たちに展開。気難しそうな下宿人もさっと登場させ、じめじめさせない。父の不在と娘たちというあたりで「若草物語」がふと頭に浮かんだが、wikipediaにも「第二次世界大戦下における『若草物語』現代版を企図」と書かれている。

心細い時期の家族の暮らしを夫に少しずつ書く報告の手紙に沿った展開。少し前にゴールディ・ホーン主演の納得いかない銃後もの「スイング・シフト*2を観たのであちらと比べてしまう。描かれている事柄は結構共通だったりして、登場人物に共感しづらいあちらのあかん加減が際立った。

娘役がジェニファー・ジョーンズシャーリー・テンプル。シャーリー、ほんとに小さな子役時代の写真は観たことあるけど演技しているのを初めて観た。16歳のシャーリー、ふくよかでかわいく、姉妹の設定もコントラストがついていて見やすい。

軍事の名家に生まれ、優しい心映えなものでうまくその流れに乗れない男の子の葛藤がじっくりと描かれる。士官学校を中退した話が語られるが、その時「ウエストポイント」という言葉が聞き取れた。「長い灰色の線」*3の舞台だ。あそこからはあふれてしまう人物に光をあてているのは好感が持てる。立派な祖父に感じてしまうひけ目やプレッシャー、形は違えどもいよいよ大団円を迎えようとしている百人一首大河マンガ「ちはやふる」にも描かれているテーマだ。

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