「黒砲事件」と「ヘヴィメタル」

先日「黒砲事件」という85年の中国映画をふや町映画タウンから借りてきた。80年代、90年代、日本でもビデオリリースされた中国映画の良作が多く、その後DVDになっていないものも結構あり、せっかくだから観て記録を書いていこうかなと思っている。

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重苦しいジャケットだけど、ストーリーは観やすい。「黒砲」とは中国将棋の駒の一つで、将棋好きの技術者が誤解を受けたことにより、党の意見で人を支配するがちがちの中国管理社会で国益まで損なってしまうことになるというペーソス味にあふれた作品。技術者のキャラクターもとても親しみやすく描かれ、最終的には救いも用意してあって後味も悪くない。組織に生きるやるせなさが端々に描かれ、国を超えた共感を覚える。そして、こういうものが比較的自由に作られていた当時の中国の空気を感じた。

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ビデオジャケットの解説によると、平均年齢28歳のスタッフたちによって作られたものだとか。今まで観てきた中国映画から連想する重みとは少し違うカジュアルさ、新しい息吹も大いに感じた。

これを観るきっかけになったのが、ウー・ティエンミン(WU Tian-Ming 呉天明)という人物がプロデュースしているということからだった。ウー・ティエンミン監督作品の「變臉~この櫂に手をそえて」*1という、「大地の子」で有名な俳優チュウ・シュイ朱旭)が演じる中国の仮面芸をベースにした物語を自分は偏愛していて、そこからさらに奥に進みたくなったのだった。ウー・ティエンミンは、チェン・カイコーの「子どもたちの王様」*2もプロデュースしていてこちらもなかなか良かった。

と、いうようなことから、プロデューサーで映画を観てみるのも良いものだなと思った次第。で、「ヘヴィメタル」(1981)。

 

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こちらは今頃80年代版を観て楽しんでしまった「ゴーストバスターズ*3の監督アイヴァン・ライトマンがプロデュースということで観た81年のアニメーション作品。

原作は同名のアメリカンアダルトコミック誌とビデオジャケットに書かれているが、もともとは「メタル・ユルラン」というフランスのSFホラー漫画雑誌がアメリカで翻訳されたもので、名前だけは自分も知っているバンドデシネ*4作家のメビウスジャン・ジロー*5なども創刊に関わった雑誌であるらしい。

謎の緑の玉を巡っての7つのオムニバスからなっているこの作品、皆さんの感想を読んでいるとこの表紙にもなっている翼竜に女性がまたがる7作目「ターナ」の評判が一番いい。自分も同意見。それまでは、パワーのある「緑の玉」という共通項があるし、別に退屈ではないしタランティーノの作品みたいな匂いもあるのだけど、表層的にアメコミを楽しんでいるような感じ。「ターナ」は、アーサー王伝説みたいなシーンからの女性勇者の動きがとても神々しく、だらんと見ていた自分もしゃんとするような勢いがあった。

フィルマークスの感想をみていると、音楽に価値を置いている方も多い。

filmarks.com

f:id:ponyman:20220326210138j:plain6作目「美人は危険」の1コマ。左側の人の帽子のマークが気になった。