恋人たち

 

恋人たち [DVD] (HDリマスター版)

恋人たち [DVD] (HDリマスター版)

  • 発売日: 2009/08/05
  • メディア: DVD
 

 

ルイ・マルの作品には、目の前で起きることにどこまでついていけますか、常識で切り捨ててよいのですかと試されている感じを持つものが多い。「好奇心」*1や「ルシアンの青春」など登場人物の行動には驚かされるのだけど、そこに至った感情の動きは緻密な表現によって見ている者をのみこみ、否応なしにこういうことだって人間の生活にはあるんだよと物語の中に放り込まれてきた。

「恋人たち」では、田舎で物質的には十分恵まれた結婚生活、子どもも可愛い、なのに、そこに満足できなくなってしまっているジャンヌをジャンヌ・モローが堂々と演じる。常識の枠にとらわれると、酷い、というような行動も、物語のクライマックスの居心地の悪いディナーでの応酬や、その後のジャンヌの顔に浮かぶ笑顔によって、そう思っているならその道を行け、というような気持ちになる。*2

挙げ句に、物語の終盤、この映画はここで終わるけれど、実はここから甘いばかりでない第二章が始まってしまうんだよという予感。全編、ジャンヌを冷静に撮っているような姿勢やそう来るかというような展開もおもしろいし、自分の居る事態に自覚的なジャンヌの目の見据え方は、なんだかルイ・マルってよくわかってらっしゃるという気持ちになり、力強さも感じる。

*1:好奇心 - 日常整理日誌

*2:友人も「死刑台のエレベーター 」での彼女の笑顔について語っていたけれど、ジャンヌ・モローってなかなかおっかないけれど、それゆえか笑顔がとびっきりかわいくみえる。