観たのはVHS版にて。1963年山田洋二監督作品。
「下町の太陽」というタイトル、そして倍賞千恵子主演ということで寅さん系列の映画を連想するし、しかも、めちゃくちゃやってる初期の寅さんでなく後年の説教臭い感じもなきにしもあらずなんだけど、モノクロでちょっとドキュメンタリータッチな、ぶつ切りっぽい撮り方、ジャズっぽい音楽もあわせている雰囲気は、ヌーヴェルヴァーグとは一線を画した監督とはいえ、時代の影響も感じる。
団地暮らしが若者のあこがれとして描かれている。この先ににっかつ「団地妻」シリーズが出てくるのかな・・対比してのお年寄りのアイドルみたいな下町暮らしのヒロイン。どういう人と結婚したいかという理想を語り合う二十代の人たちより、下町のお年寄りたちが濃くて面白い。
ツイストを披露する左卜全。横縞のシャツが軽妙でいい感じ。
小柄でしゃがれ声の武智豊子。昭和のテレビや映画にちょろっと出ては強い印象を残しておられるイメージ。
このお年寄りたちの、後半に出てくる偽悪的なノリがちょっとおもしろい。
藤原釜足演じるヒロインの父。職人気質な一徹ものの雰囲気がとても良い。羽海野チカさんのコミック「三月のライオン」のおじいちゃんみたいな感じ。
東野英次郎が、少し悲劇的なペーソスのある役なのだが、つらさの表現がうまい。うますぎる位だ。それと、前述した老人たちの偽悪ノリがつながってるのだけど、ちょっと山田洋二の考え方がみえるようなところでもある。