雪の断章 ー情熱ー

 

珍妙なところあれど不思議な魅力がある映画ということで観てみた。85年相米慎二監督作品。「探偵物語」(83年)や「Wの悲劇*1(84年 こちらでも世良公則が大事な役)、「はるか、ノスタルジィ」*2(93年 北海道が舞台というところが同じ)など80年~90年初頭のアイドル映画に共通する空気を感じた。少し少女漫画的というかファンタジー的飛躍のある感じ。「ガラスの仮面」のような空気も。みせる力はある。

エンドロールや要所に不思議な気配を持つ人形が出てくるが、「自動人形」と紹介され、スタッフ名に小竹信節さんという名前。調べると「天井桟敷」の美術監督をつとめていた方らしい。それで妙に不穏だったんだ。プロフィールには「1991年度スパイラルホール(株式会社ワコールアートセンター)の芸術監督に就任し、人間のいない装置のみによる演劇を試みる。」と書かれている。自動人形とはそういうことかな。

源氏物語」の紫の上的なストーリー、孤児もの、殺人事件など取り混ぜた話の展開はちょっと荒っぽい気がしたのだけど、前述の自動人形風の大きなピエロが不穏に歩いてみたり古典劇のような白装束の人たちがぼんやりとバックにあらわれてみたり、主人公が口ずさむ歌が妙に古風だったり妙に前衛的なにおいも漂わせている不思議な映画だった。

河内桃子がおせんべいをガリガリ齧ったりするちょっと無神経な、カネさんなんて名前のお手伝いさんで意外な気がした。河内桃子といえば、自分の中のイメージではカトリックの布教番組「心のともしび」で朗読。さらには、山田太一のドラマ「沿線地図」でのハイソな奥様役。下町の電気店の店主河原崎長一郎を誘惑してお茶の間に衝撃を与えたりしているようなとにかく上品がベースのイメージなので。成瀬監督の「妻」で高峰三枝子もおせんべい齧ってがさつな妻を演じていたがああいう流れかな・・