雁の寺

 

雁の寺 [DVD]

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ずい分前にみたもので、主人公をいたぶる好色坊主を勝手に先代鴈治郎さんだとばかり思い込んでしまっていた。つい先日、ふや町映画タウンで話していて、あの坊主は三島雅夫氏だと驚きの事実を告げられ、確認のためみてみた。すると、言い訳がましくなるが、坊主は確かに三島氏だが、鴈治郎さんもなかなか女好きの役だった。序盤だけの出演だけど、この物語のひとつの原因を作っている存在。しかし、三島氏の役も好色坊主なんて書いたけど、今回見直して、以前みたときより、弱さの加減なんかもリアルでこういう人いるな、と、とても身近な存在としてとらえるようになっていた。若尾文子の生活上の切羽詰まり具合も前回よりしっかり理解できたし、若い主人公への行動なども、この人の精一杯だという感じに受けとれ、以前みたときのとてつもない話という印象からなにもかもが腑に落ちる話という風に自分の感想が変化している。

筋をわきまえた上での再見は、筋を追うことから解放されてアングルのかっこよさ、細かいネタのおもしろさなどを存分に味わえた。

主人公を演じる高見国一という俳優さんのなにかを内に秘めた目の光、柳良優弥のようなものを感じた。はなしのクライマックス、サスペンスもののような緊張感とこの主人公の頭の良さに笑いだしたくなる衝動にかられた。

また今回、三島氏の友人のカメラ小僧なモダン坊主がすごく気になった。あとで調べたら山茶花究氏。言われてみれば!山茶花氏、勝手に嫌みな番頭さんのイメージを持っていたもので、こういうスノッブぽいのもいけるのね、と楽しい発見。この僧侶の描写もだし、最後の幕切れも川島監督らしいものだった。

また八百文フルーツパーラーの包み紙や大市のすっぽんなどの言葉から漂う京都らしさも堪能した。お葬式のことを「そうれん」と呼ぶのも昔よくきいたなあ。