あゝ、荒野 前編

 

あゝ、荒野 前篇

あゝ、荒野 前篇

 

 

 

寺山修司原作のものを菅田将暉主演でということでどういうものになるかと思っていたが、とにかく面白かった。寺山作品によくある母への複雑な思い、少年が自立するということなどのテーマがうまく今の時代のエンターテイメントとして調理されている。劇画かと思うような、刺激に満ちた展開。菅田将暉と年上の同輩ヤン・イクチュンの動き、表情のリアルなこと。どえらい環境からの殺伐としたスタートで、なおかつ、その辛さが身に染みる表現なんだけど、この二人とユースケ・サンタマリアの軸がしっかりあって、非情なようで、人間の匂いのする新宿という町をしっかり感じ、小さな太陽をみているような気持ちになる。地味な役をよくみている木村多衣が今回は少し違う顔も。

自殺防止キャンペーンというイベント、ものすごく戯画的であるけれど、序盤の人をのむテイストは寺山作品のようなものもあり、また主催者の痛々しさに三島由紀夫のことをふと思い出したり。。三島の文学作品群なしでの表層の出来事だけの一致でそんなこと思うのは失礼すぎるのは承知なんだが、なにか三島の出来事のあるつらさも表現しているように感じた。このイベントがらみで極端なアイコンとして出てくる山中崇氏、この人は「菊とギロチン」でもよいなあと思ったのだけど、なにかいつもひきこまれるものを感じる。