ピーター・グリーナウェイの枕草子

ピーター・グリーナウェイ監督 96年 

ロケに使われた山科の春秋山荘というところには幻想的な人形の展覧会に行ったことがある。*1山科の駅から川沿いに山に入っていく。夜来たらこわいだろうなと思うような自然に囲まれた場所。

自分が訪れた2016年当時は80年代に友人も耽読していた耽美的な雑誌「夜想」の主宰者の方のギャラリー*2だった。(2020年 1月ギャラリーとしては終了→その後持ち主が変わったそう。現在についてはこちらが詳しい。写真も。)

この作品とあの場所の雰囲気はぴったり。自分の訪れた年代より20年も前の作品であり、撮影当時のオーナーはどなただったのかもわからないけれど、テーマが書物であることにも引きずられ。

映画に映る書き文字とセリフで違う寺社を指していたり、戦後の物語ぽいのに軍歌がかかったり(象徴的な扱いなのだろうが軍歌アレルギーの自分には少し辛い)、主人公は日本人と中国人のハーフという設定ではあるが香港のシーンと混ざって、ごちゃごちゃになっている感じもあり、身近な世界のことだけに、違和感を感じたりもしたが、もうグリーナウェイの頭の中の日本と東洋ってことなんだなと飲み込む。

スコセッシ「沈黙」*3で存在感のあった笈田ヨシ*4が出演。

ユアン・マクレガーは重要な役なのに自分は気づかなかった。若き光石研も少し出演。

冒頭の緒形拳は迫力があったが出番少ない。

独自の美学についていけないものもあったが松尾大社のモノクロの結婚式場面は禍々しくも美しかった。

書物の章立てにしてものごとを語るところは「プロスペローの本」*5のようだったし、色分けは「コックと泥棒、その妻と愛人」*6のよう

その昔、平安文学大好きな人にこんな映画あるって話したことあったけど、もしご覧になってたらなんだか恐縮。彼女のいつも語っておられるものとはかなりかけ離れていた・・

 

※日本版のDVDはなし アメリカ版はあるようだが、日本製のデッキでは再生できませんと注釈。もちろん日本語字幕なし。