シネ・ヌーヴォで成瀬監督の特集上映

大阪の地下鉄九条という駅におりたこともないのに、うっかりとホームページから印刷した地図を忘れてしまった私。でも大丈夫。駅にある地図にもちゃんと載っているしそこでおぼえた道筋をぶらぶら行くと
nouこんな看板や

nou2こんな看板が映画館まで導いてくれる。

nou3そして到着!「演劇公演の際、自分たちで巨大な劇場を造る特異な劇団・維新派が内装を担当。」とホームページにも紹介されているけれど、ほんと学生の頃東京の中央線沿線の小劇場にいろいろなお芝居をみにいった時に感じた勢いがものすごく感じられる建物でわくわくします。またはってあったポスターが三島由紀夫だしタイムスリップな味わいもあり、余計に気分が盛り上がります。

平日の朝だというのにすごくたくさんの来場者。通しでいくつかのプログラムをみておられる方も多いようで、入れ替えの時間のロビーも熱気につつまれる。旧作ビデオ専門店ですれ違うような本当に映画好きのにおいのする方がいっぱい!スクリーンのある場所も維新派の内装がものすごくいかしていたのだけど、映画がはじまっていなくてもデジカメ撮影などすることがすごくミーハーな行為のように思われて控えてしまう。

今まで成瀬監督のものはビデオでしかみたことがなかったのだけど、それをスクリーンで成瀬監督を愛する人たちと一緒に楽しめる喜び。昨日はそれを強く感じた。建物とあいまって演劇を観にいくときのリアルタイムな愉しみ、みたいなものをすごく味わえる映画館だった。

わたしが観たのは「はたらく一家」という作品。狭い家にたくさんのこどもたちがひしめきあって、進学したくてもままならぬような状況のおはなし。豊かになった日本ではこういう一家が標準ということはなくなりましたが、親の想い、子の想いっていうのは経済的に豊かになってもまったく一緒。今かかえている自分の問題を描いているものだ、とかなり感情移入してみることができた。役者がめだってやろうなんてわざとらしさのない、みんな演じ手がその役になりきっている姿がすばらしく、本当におはなしにはいりこめる。戦中の日本の家庭をとても身近に感じられ、大変な状況であっても絶望的な悲惨なばかりの話でなくなんかおっとりしたユーモアみたいなのも漂っていて、楽しめる作品だった。佐藤忠男さんのお気に入りとして紹介されているのもみたことがある。

映画の撮られた当時の町並みを味わうのも成瀬監督の映画をみる楽しみのひとつなのだけど、冒頭の風景や、よく出てくる喫茶店などもとても味わい深い映画だった。

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