ドライブ・マイ・カー

 

 

好きな作品の多い濱口監督がカンヌで賞を取った作品なのに出遅れ鑑賞。

村上春樹の原作だが、主人公が演出家でチェーホフの「ワーニャ伯父さん」からの台詞と共に話が進む。

妻の不可解な行動を目撃したものの問うことはしないでわだかまっているうちに妻が急死してしまい置いてけぼりになった男の物語。

広島での演劇祭で彼の車を運転することになるのが三浦透子。ディズニープラスの宮藤官九郎のドラマ「季節のない街」*1で辛い日常を送りつつも抑揚のない感じで乗り切っている人を好演していたが、この作品の役柄とつながっている感じもする。無駄口をたたかなく落ち着いたプロ意識があって信頼できる人。

身近な人に先立たれ生き残ったものの後悔の念からの再生ということもひとつのテーマであり、自分も体験したことのあるもう少しなにか出来たのではというような気持ちは劇的な経緯でなくてもやはり同じ部分があり、心に響く。広島という土地柄や、三浦透子扮するドライバーの話から「父と暮せば」のような戦災や災害で身内を失ったひとへのメッセージとも感じられるが、それに限ったことではないと思う。でもそれが押し付けがましかったり劇的な音楽を流され感動やしんどさを押し付けられるのでなく描かれているところに心地よさを感じた。

主人公が関わっている演劇祭の「ワーニャ伯父さん」は日本語の台詞の返事に韓国の手話が使われたり多言語で構成されており、言語の疎通ができない環境での稽古や本番が行われていたが、ちょうどこの映画の直前に観たオランダのヨス・ステリング監督の「ポインツマン」という映画が言語の通じない者同士の暮らしに純度を感じさせるものだったので頭の中でつながったりもした。

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