フレンチ・ディスパッチ

 

久々に観たウェス・アンダーソン監督作品。

「フレンチ・ディスパッチ」という雑誌の編集長が亡くなり彼への追悼号でもあり最終号でもある雑誌づくり及びその紙面を映像で表現。

最近骨太のクラシック映画を重点的に観ていたもので久しぶりの彼の作品世界のあまりの軽味と美意識オタク的な饒舌に目が回りそうになるが、これこそが彼の父権的なものに対する抵抗の旗印であるという自明の真実に思い至り、還暦を迎え年相応の肉体の軋み重みを感じつつ、どちらかといえば人を指導するような立場にもありながら軍隊的ヒエラルキーのある場所に抵抗を感じ続けてしまう自分の拠り所じゃないかという気持ちにふとなり、突然にこのミニチュア感に満ちた彼の戯画的な世界への愛情が溢れてくる。

雑誌の紙面なので様々なストーリーが詰め込まれているが、一番好きだったのはベニチオ・デル・トロ扮する精神疾患の受刑者の絵がエイドリアン・ブロディ扮する俗臭芬々で嘘くさい画商に売り出される話。戯画ぽさが徹底していていい。

フランシス・マクドーマンド演じる切れ者編集者と学生運動との「恋と革命」のような話も印象的。チェスの戦いにしているのもウェス監督らしいし、先日やっと観た「三島由紀夫全共闘~50年目の真実~」を観た時と重なる気持ちにも。観念的な言葉のぶつけ合いはちょっとわからないけれど、結局「愛」が大事だなと。学生の名前がゼフィレッリというのはなんだかとっても気になった。

警察署長の息子の誘拐事件と名うてのシェフの物語は、アクションシーンすべてアニメにしてしまっているところがまたまたらしくて気に入った。またまたネスカフィエなる登場人物のネーミングが気になる。

あとで解説を読むとこの作品にはモデルがあって「ザ・ニューヨーカー」の話とのこと。どこがどう、っってことがわかればもっと楽しいだろうな。

ウェス・アンダーソン監督、現在公開中の作品がなんだか盛り込みすぎて集中しないと難解だという評判もきく。自分は多分劇場では理解できないような気に。巻き戻しながら観ようかななどとも思っている。