諏訪敦彦監督

諏訪敦彦監督の作品を二本観た。

ひとつは「2/デュオ」

2/デュオ

2/デュオ

  • 柳愛里
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 画像

↑ビデオジャケットの写真があまりにも打ち沈んでいるもので怯みそうになるが、すごい吸引力のある作品。西島秀俊が壁にぶち当たっている役者役で、同居の彼女への八つ当たりっぷりが、ひどいのだけど、なんだろう、西島氏の声の健やかさに救いがある。少し前に観た行定監督の「劇場」*1も、一緒に住んでいる相手をとことん振り回す男が出て来たけれど、あっちの方がタチが悪い印象。「劇場」は又吉原作で、又吉の好きな太宰治の結局は自分が好きというところがにじみ出すぎているような・・あちらにくらべると「デュオ」の西島氏演じる男はまだ相手をちゃんとみつめている感じがした。つまずきながらも真っ白になっても歩いていく感じに好感を持つ。それは西島氏の持つ空気ゆえんの気がする。

アテネ・フランセ諏訪敦彦監督の特集が組まれた時の解説には

2週間の撮影で、やはり連日1日の出来事を撮る。その日の結果で、翌日のシーンが決められた。柳愛里と西島秀俊の二人の話となったが、撮影時は三角関係の物語だった。俳優本人として演じることのインタビューが挟まれるが、諏訪本人はフィクションとして破綻したら、なぜ失敗したかのドキュメンタリーにしようと考えていた。 

と書かれている。なるほど。そのためのインタビューか。。一応演じ手は俳優本人としてというより役のままその時の気持ちを話してくれていて、みているものが冷めたりはしなかった。その日その日のあるカップルの様子をのぞいているような感覚もあり、その時のいろいろなファクターの影響を受けつつ出来あがった一回性重視の、劇場で観る演劇のような画面という感じがした。

「2/デュオ」の次に作られた「M/OTHER」*2も、アテネ・フランセの解説によると

台詞が書かれた脚本は存在しないが、二人の履歴書は綿密に作られた。これは即興演出ではない。むしろ、その対極である。俳優の自由が最大に尊重され、撮影所育ちの三浦は戸惑ったが、場の空気感が見事に掬い取られた。

とのことだけど、脚本をなぞるのでない映像を監督は目指しておられるのだろうな。

また

前作で魅力的な存在感を見せた渡辺真起子に、諏訪憧れのスター三浦友和を組ませ、年の離れた男女の同居を描く。 

 とも書かれているが、この前作というのが「2/デュオ」であり、「2/デュオ」の中での渡辺真起子氏、確かに現実的に生きている力強さがとても魅力的だった。

 

もう一作観たのが「H STORY

 

H STORY [DVD]

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  • ベアトリス・ダル
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 アテネ・フランセの解説は

ヒロシマ モナムール』のリメイクという不可能な挑戦の結果、レネというより、ガレルに接近する。ベアトリス・ダルを招いたこと以上に、撮影をシャンプティエに任せたことが大きい。本番のキャメラがカットの声の後も撮影現場を撮り続け、メイキングと本番を一台のキャメラで往復する手法により、時空は迷宮化していく。

ベアトリス・ダルが、「ヒロシマ・モナムール」とは俳優のバックグラウンドが違いすぎるのに台詞をなぞることへの不誠実感を表明、懐疑を示すのだけど、確かにオフショットが混ざる撮影を観ているとすべてに虚実が混ざっている感覚になる。ベアトリス・ダルは不機嫌演技うまいしなあ・・と、どこまでが仕込みだかわからないような感覚に。町田康氏が一種天使のような存在として出てくる。彼はそれにふさわしい空気を持っていると思う。