フランス映画の旧き名作、勝手に随分構えて一人敷居を高くしていたが、今年は特に観てみないとわからないなあという気持ちになったこと多々。
少し前に行きつけのレンタル店ふや町映画タウンのおすすめという理由だけで観たサルトル原作の「賭はなされた」
などもとても観やすく可愛らしくハラハラもし、心も掴まれて。そういえば大学生の時に読んだサルトルの「恭しき娼婦」や「嘔吐」なんかも筋はすっかり忘れているけれど楽しかったなあと。
そして、今日観た「ヘッドライト」。確か山田太一か倉本聰のドラマで往年を偲ぶ形で紹介されていたように思い、いつか観なきゃいけない映画だし位の気持ちで観始めたら。。もう惹き込まれる。
勝手にお上品な映画と思い込んでいたらジャン・ギャバンはトラック野郎。邦題はそこからのタイトルだったか。仕事への取り組みは一流で信頼されているのに文太さんのような自由を謳歌できるわけでなく、管理され嫌味をいわれ雇用者に振り回され、家には生意気ざかりのティーンエイジャーの女の子からまだサンタを待っているような小さい男の子までおり、労働に振り回されながらも家族への責任を果たそうとしている真面目な父親役であった。だけど渋い。
「恐怖の報酬」なんかでも生活をしていくためには危ない仕事でも引き受けなきゃならないという切迫が伝わりそのリアルさが物語を支えていたけれど、ジャン・ギャバンの生活の大変さも、また出会う田舎の休憩所の女の子(カトリーヌ・アルヌール)の誰にも頼れない境遇も、その心根のゆかしさも、ギャバンが同僚等には信頼される存在であることもとても丁寧に描かれそのベースがしっかりしているから応援して入れ込んでみてしまう。
大げさなところのない描写がまた良い。二人の心が結びつく瞬間の可愛らしさ、二人の身に起こったことを観客に知らせる出過ぎない表現、筋も練られていて醒めることなく没入した。
アンリ・ヴェルヌイユ監督、「牝牛と兵隊」*1も丁寧な描写と面白み、あたたかみが良かったな。
原題は中条省平の著作*2によると「とるに足らぬ人々」とのこと。フランス流の言い方だな。
*2:「教養としてのフランス映画220選」