女の小箱より 「夫が見た」

 

久しぶりに観た増村保造監督作品。増村作品、どきついなとかやりすぎだなとか思うこともあったが、これは一気に惹き込まれた。話は今どきないような欲望に忠実な話だが、構図も凝ってて美しく、堪能。株の買い占め乗っ取りという話に女がからめてあるのだけどよくあるようなただの手段としての女ではない描き方、それにあぐらをかく男たちをただではおいとかない流れ、古臭さの中に女を閉じ込めない感じがとても爽快。

どう展開するのかというサスペンス的要素もありミッドセンチュリーぽい画面も楽しめる。

若尾文子田宮二郎もその演じる人物造形に共感できるところがあり、気持ちをそらされなかった。

明治生まれの気骨をみせる小沢栄太郎演じる株主の姿なんかも昭和の企業ものって感じでとてもいい!

この手の話、経済ものの丁々発止と考えると女の絡ませ方で幻滅したりすることがあるんだが、この作品に関してはそうは思わせない勢いがあってそれに素直に乗れた。