最近読んだ本2冊
1.演劇のことば
平田オリザ氏による日本演劇史。
平田氏自身のあまり遠慮のない筆致で読みやすい。
川上音二郎、坪内逍遥、島村抱月、松井須磨子、岸田國士、築地小劇場、戦中の移動劇団、文学座などについての実相、きれいごとではないまとめ方に好感を持つ。
島村抱月と松井須磨子といえば「女優」という映画*1で題材になっていたが、その映画の中で島村抱月を演じていたのが築地小劇場のパトロンとしてこの本にも出てきた土方与志氏。品が良くインテリっぽいなあと思って観ていたが、赤い伯爵といわれ、左派運動のために投獄され、5年間も獄に入られ伯爵号を剥奪された方だとこのたびこの本きっかけで調べて知った。
「築地小劇場」が分派して土方氏の一派は「新築地劇団」となり、それが、沢村貞子の「貝のうた」に出て来た劇団なんだな。
土方氏の妻はドラマ「いだてん」に出てきた三島彌太郎(三島弥彦の兄)の娘さん。三島彌太郎氏は徳富蘆花の「不如帰」の夫のモデルになった人だが、土方氏の妻となった人は、「不如帰」に出てくる妻(浪子)の子でなく、その後の後妻さんとの間の娘さんらしい。
2.三谷幸喜のありふれた生活(17) 未曾有の出来事
朝日新聞連載のこのコラムいつも発刊が遅い。この本も確か2022年の年末に出ていたと思うけれど2020年の夏の頃の話が出てきたりする。
そのときそのときの仕事の話が載っていて、「鎌倉殿〜」については予告編という感じ。コロナ禍中wowowで観た「大地」*2は感動的だったので制作秘話を楽しく読めた。
三谷さんのコラムの中で一番いいのが訃報。映画や演劇関係でリスペクトしてきた人のことをとても丁寧に書いてある。今回は劇団民芸の梅野泰靖さん。わたしは三谷作品で好きになったが、若き日に「幕末太陽傳」にも出ておられたりコロンボで飄々とした犯人(ロバート・カルプ)の声をあてておられたりしていたんだ。
マックス・フォン・シドーの話では、三谷さんが「処女の泉」や「第七の封印」などはごらんになってないと書かれていてなんかほっとした。
おすすめの「コンドル」(シドニー・ポラック監督)、「ブラス・ターゲット」(ジョン・ハフ監督)のジェントルな殺し屋興味あるなあ。そして、機敏な感じのしない彼が動きの素早い脱獄囚を演じたという「ナイト・ビジター」(ラズロ・ベネディク監督)。