どん底

日仏の「どん底」映画を観比べ*1ルノワール版は原作を大胆に変えたといわれているけれど原作はどうだったのか気になって読んでみた。

 

どん底 (ロシア名作ライブラリー)

どん底 (ロシア名作ライブラリー)

 

 読書力がすっかり落ちているので心配だったが、2019年新国立劇場での上演のためにされたこの新訳とてもわかりやすく面白かった。海外文学や古典、それがいいともいえるけれど、初学者にはオーソドックスすぎる言葉の垣根があることが多いけれどそれがとても低い。

たとえば本の裏に印刷されている言葉

仕事もねえし……力もねえ!……これこそが真実だ!居場所が……居場所がねえんだよ!

まさに現在的な感覚。

読んでみて、厳しかった黒澤版、キツすぎると感じた香川京子の扱いなど含め原作にかなり忠実だったんだなと感じた。

黒澤版で目立っていた巡礼(原作ではルカ)、原作でも彼の存在がとても光っている。ルカの物語みたい。黒澤版でも阿弥陀如来への導き手のように感じたが、こちらでも宗教的なものに衆生が近づくため語り掛ける存在として感じられた。黒澤版の左卜全さんの姿を思い浮かべながらずっと読んでいた。

年代も地理的にも離れたロシアの戯曲、読んでいる間全然退屈しなかった。

訳者の安達紀子さん、京都産業大学のご卒業。産大のサイトに載っている卒業生からのメッセージ楽しく拝見した。

www.kyoto-su.ac.jp