どん底

 

どん底(1936) [DVD]

どん底(1936) [DVD]

  • 発売日: 2004/04/26
  • メディア: DVD
 

 

 

どん底

どん底

  • 発売日: 2015/04/22
  • メディア: Prime Video
 

 仏、日の「どん底」を観比べてみた。

山田宏一さんと和田誠さんの「たかが映画じゃないか」で話題になっていたので。

 

 和田さんはジャン・ルノワール監督のエンディングが好きじゃなかったようだけど、自分は好みだった。黒澤版の容赦のない感じ、自分が19年くらい前にみた感想を見ていると大丈夫だったみたいだけど、今回はなんだか堪えた。どん底の人々の苦境をリアルに感じてしまったからか?この20年弱の間に俳優さんのお仕事も少しは詳しくなり、たとえば藤原釜足さん演じる役者が大一番の見せ所「三人吉三」の「こいつは春から~」を唸るところなど、観客を唸らせる花形舞台の決め台詞によって、現実と夢とのギャップをシビアに思い知らされ、ますますつらくなったのかも・・

「たかが映画じゃないか」の中では男爵を演じたルイ・ジューヴェという人のことが話題になっていたが、黒澤版では千秋実さんが「午前様」という役でこれに相当するようだ。元旗本の家柄のような設定。姿かたちはずいぶん違っているし、黒澤版ではルノワール版より余裕のない感じでもあったが、育ちの良さゆえかどこかおっとりしたところ、というのは共通しているように思った。ルイ・ジューヴェの男爵は、彼と友情を結ぶ泥棒のジャン・ギャバンともどもすごくかっこいい。

ルノワール監督版ではジャン・ギャバンと関係のある大家の妻もどこか女心が感じられるような雰囲気であったが、黒澤版の山田五十鈴はもうとことん憎々しい。そして香川京子演じる妹の扱いも容赦がなく・・ここも、今回ルノワール版から観た自分には助けてくれという感じだった。

黒澤版では、左卜全氏演じる巡礼の台詞などがとても救いになっているのだけど、どん底下宿に住む一人一人をよく見ていて、心に届く言葉をかけていくところ、これは少し台詞に出てくる阿弥陀如来への導き手か?とも思える。そう思うものには思わせておこうというような話の流れ好ましい。

小津安二郎監督の「浮草物語」で純粋な息子、戦後の「浮草」ではうってかわってすれっからしの役者*1を演じて覚えた三井弘次氏が本当は魂の救済を求めているシニカルなキツネのような役。