美術館「えき」KYOTOにて (紹介はこちら)
一番驚いたのは安西さんの大学の卒業制作。映画「オーシャンと11人の仲間たち」を何枚かの絵で表現したもの。一コマ一コマがジャズのレコードジャケットのよう。仕事されてからの安西さんの絵とは全く違って洒落てクールなアメリカ映画のタイトルのような筆致。雑誌「アイデア」の卒制特集にもとりあげられたとのこと。あと小学生の時のノートの精緻さ。かねがねみうらじゅん氏の小学生の時の仏像ノートに尊敬と驚きの念を持っているのだけど、へたうま的な流れから世間的に有名になった人たちも実は基礎がしっかりしていて、そこからのくずしなんだな。千葉の千倉で育った安西さんの「パリに育ったらパリの美術館でいつでも一流の絵に触れられたかもしれないけれど、自分は一流の海をみて育った」という意味の言葉もよかったな。せちがらくない絵をかかれる感じなど育った環境というのは作品に大きな影響を与えるだろうな。
ふむと思ったメモ
- 雑誌ガロについて「胸に差し込んでくる情感」との言葉。
- 幼い安西さんが色鉛筆が大好きだったこと。歌舞伎や雛人形で整理のつかなくなっていた色感の整理がついたとのこと。ミニマリズム的な考えって参考になる。二色で表現している「二色展」の作品も好きだ。
- 村上春樹氏の安西さん評 「安西水丸という一人の人間を絵という形で表し続けていた」。映画スターの似顔絵が似ていないことを嘆く安西さんに村上さんがおっしゃった「安西さんは矢印って武器があるから」という意味の言葉がおかしい。ほんとに矢印で誰とかいておられてりしていて・・
- 水丸さんが「ホリゾン=水平線」と呼んでいた画面を横切る一本の線。これでそのものが机の上にあるものとか場所まで表現できる。記号的に表現するところ、小津安二郎の映画にも相通じる気がした。
- 二人の絵でひとつの作品をつくる和田誠さんとの二人展。二人の信頼関係がうかがえる。和田さんは三谷幸喜氏とも映画本「それはまた別の話」の表紙をふたりでかかれたりして、そういう仕事お好きなんだなあ・・