希望の牧場

福島第一原子力発電所警戒区域に取り残された「希望の牧場・ふくしま」のことをもとにつくられた絵本。
絵の吉田尚令さんは、宮沢章夫さんのNHKの朝のラジオ「すっぴん!」に出演されたときや、朝日新聞の「プロメテウスの罠」という連載記事の取材の中で、牧場主の吉沢さんを英雄扱いにしたり、説教的な物語にせず、ただ牛の面倒をずっと見続けたいから牛を飼い続けている吉沢さんという人がいた、ということを後世に伝えられる絵本を作ることにしようと、文章の森絵都さん、そして編集者と語り合ったとおっしゃっている。
ストイックに力強く描かれる世界に衝撃を受けた。

そしてここはどうやって成り立っているのか気になった。6/16日付けの「プロメテウスの罠」には、最初は研究対象としていろいろな大学や研究機関から声がかかったけれど、研究費削減を理由にそれが減ってきている事、また別の日の記事には寄付から成り立っている活動資金の話が載っていた。
泣く泣く牛を犠牲にした人たちのことも描かれ、どうすることが正解かわからないし、そういう方向の本でもない。
目の前のどうしようもない現実とどう向き合うか、どう生きていくのか、原発のことを離れてそんなことも問いかけてくる。無心な表情をしている動物たちが印象的だ。