古い着物をカジュアルに楽しく着こなしている京都在住のマリンバ奏者通崎さん。大山崎山荘美術館で彼女の着物のコレクションや、帯を仕立て直した掛け軸、和菓子やタイル作家の方とのコラボレーションのすばらしさを拝見。これはすごく謙虚な口調で、どのようにして通崎さんがクラシックだけど、権威主義とはまるっきり反対の身のまわりのすてきなものに出会ったか丁寧に書いてある本。写真もとてもきれいだし、地に足着いた京都の生活の楽しみが描かれている。
初夏の頃、大山崎美術館で「通崎好み」という展覧会があり*1、通崎さんの好みのものが、重厚な洋館と安藤忠雄さんデザインの別館に展示され、建物とコレクションの調和がすばらしかったのだけど、この本はその展覧会に行った人はより深く展覧会の内容が楽しめるし、行っていない人も通崎さんのおすすめ、ってこういうテイストなんだ、こういう経緯を経ているんだ、とよくわかる本になっている。
個人的にも「おお ここもつながっている!」と思うポイントが多くて楽しめた。たとえば、通崎さんの骨董の先輩として版画家の木田安彦さんの名前が挙がっているのだけど、「新選組!」のタイトル画の作者さんでもある彼の作品、わたしも大好きで、そのつながりがうれしかった。木田さんが通崎さんに贈られたというパリのおみやげ エルメスのメジャーも、小さくて気が利いていて 通崎さん同様海外ブランドにあまり興味のない私でもそのすてきさが伝わるものでした。
展覧会で通崎さんの肖像画がたくさんでていた須田剋太さんのこともきちんと説明してあって、興味深く読みました。子供の心を持つ「チャイルド型」の人物、作品と、それを排除した「アダルト型」、という分類の仕方もすごくよくわかっておもしろかった。「チャイルド」の代表として挙げられている縄文土器、白隠の書と絵、って方向性わたし大好き。。で、チャイルド型の須田さんの絵もよいなーと思ったのでした。通崎さんご自身は知識、学問、常識という裏付けのあるアダルト型もお好きなようで、どっちもから好きなものを吸収したい、というスタンスがまたいいな、と思われました。
須田さんはデザイナーの早川良雄さんと一緒に洋画のあり方研究をすすめられたりもしていたらしい。ちょうど早川さんのことも個人的な理由ですごく気になっている時だったのでそこにも反応。
この本にも紹介されている須田さんの年賀状もかっこよかったなぁ。。
とにかく 通崎さんがお好きと思っていることがしっかりと説明され、自分が興味をもったポイントについて後からさらに調べるときにも便利なように書かれているよい本。好きなもののことを「こだわり」とかいうと、なんかいやらしいものみたいにきこえますが、もっと謙虚ですてきな感じ。
- 作者: 通崎睦美
- 出版社/メーカー: 淡交社
- 発売日: 2004/09/01
- メディア: 単行本
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