ともしび

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「姉妹」*1がとてもよかった家城監督。こちらもみてみた。綴り方教育がテーマでどうも「綴方教室」「山びこ学校」などの作品とも歴史的につながっているもののよう。 

朝日新聞コトバンクに生活綴方運動のことがまとめられているけれど、そこに載っている精選版日本語大辞典の解説として

最初の鈴木三重吉などの運動は文芸的なものであったが、昭和四年(一九二九)頃からは農村の不況を契機にして社会主義リアリズムへ傾斜し、

 となっている。確かに、この映画でも社会運動的な気配は漂っていた。またこちらのブログには三浦綾子さんの「銃口」という作品が、治安維持法による北海道綴方教育連盟の弾圧について描かれていると書かれている。

この映画でも作文でこどもの本音を引き出し、困っていることがあればみんなで解決しようという先生が、守旧派の村長(なんと花沢徳衛氏!私には町の片隅で苦労しているようなイメージを花沢さんの演じる人に持っているもので意外。)に弾圧されていた。農村の学校でというシチュエーション、これは戦後の話だが、ちょっと先日見たNHKスペシャルの戦前の右派新聞「日本新聞」の話も思い出した。

www6.nhk.or.jp

 

ムラ社会の中では集団圧力というのはとても強い。この映画の中では一色になってしまうのではなく、大きな声に負けそうになりながらの職員室のひっそりとした抵抗も描かれ、扇情的な、悲劇的な感じにはまとめられてなかったが。。(そこが家城監督のいいところ。)

この映画では、だれかの問題をみんなで解決しようとするこどもたちの姿が描かれていたのだが、今、この文章を書いていて思い出したのが、高畑勲の「太陽の王子 ホルスの大冒険」*2で、一人のヒーローの活躍でなく、皆で解決していこうという精神。

先日、大塚英志氏が高畑勲展の解説生中継で、高畑氏の亀井文夫などの映画からの影響という話もされていたが、なにかぼんやりと頭の中でつながっていく。(あの大塚英志氏の講演はもう一回ちゃんと読みたい。)

話があっちこちになるけれど、家城監督「恋は緑の風の中」*3でも環境はがらっと違うのだけど、こどもたちのクラス、こどもたちの夢、自由への希望が描かれていて、それをとても見やすく楽しいタッチで描かれていた。大好きな「姉妹」でも労働者の人権などの問題を、全然重苦しくなくさらっと描いておられた。この大上段じゃなく語る雰囲気、家城監督のよき特徴だな。

 

ともしび [DVD]

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 みたのはVHS

 

猫ピッチャー 9

 

猫ピッチャー 9 (単行本)

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 猫のプライドの高さ、勝手さがこの作品におもしろさを添えているよな・・猫って小型だからエバっていてもかわいいんだよな・・←あまり大きくなると殺傷能力とか結構あるので犬みたいに大型化しないようになっているらしい・・ということを最近きいた。

あさドラ!

 

あさドラ! (1) (ビッグコミックススペシャル)

あさドラ! (1) (ビッグコミックススペシャル)

 

 名古屋が舞台の、人を信じてかけひきしてみることが事態を好転させるという好ましい思想の物語。しかもそれがただの能天気でなく、苦労の末の挙句にこの主人公の女の子が失わなかった特性だからなおすばらしい。

ちはやふる 42

 

ちはやふる(42) (BE LOVE KC)

ちはやふる(42) (BE LOVE KC)

 

 

主人公千早のお父さんの痛恨のミス!でもこの作品の良いところって、ミスって誰でもあるんだよ、そっからどうするかだよという流れなんだな・・

読み手のピンチヒッターで呼ばれた九頭竜葉子さんというベテラン女性、かっこいい。年のいった人の描き方に愛情があり、とてもうまいのも末次さんの良いところだ。

重版出来 13

 

重版出来! (13) (ビッグコミックス)

重版出来! (13) (ビッグコミックス)

 

 おいしいものがおいしくみえないマンガの話、おもしろかった。おいしいからおいしくみえるのでなく、おいしい演出するからおいしくみえるという感じ。

熱くて優しい主人公からみたら敵みたいにみえなくもない、昔は熱血だったけれど仕事のやり方をかえた安井さん、安井さんが出てくるたび恐ろしいのだけど、安井さん的な仕事の視点を無視していては一段上にいけないよな・・

日本のいちばん長い日(1967)

 

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平成版*1をみたので、旧版を再見。間違いない名作。平成版をみたことでさらにこの映画の立派さがわかる。平成版もだったが近年のこういう作品、現代に引き寄せるためか、家庭人としての姿を描く傾向にあると思うが(「聯合艦隊司令官 山本五十六*2なんかでも。。どちらも役所広司の映画で。。)こちらのように仕事に集中して描いてもらう方がいい。(家庭は本当に最小限の描写だった。)平成版は歴史の解説、とっつきとしてはいいかもしれないが、映画としての格はくらべるまでもない。前回みたときも小林桂樹演じる侍従が玉音放送の録音盤を守るシーンがとても心に残ったが今回も掛け声をかけたいくらいいいと思った。セリフも素晴らしい。前回*3みたときよりも多少は昭和史の知識を増やしたおかげでマスでとらえるだけでなく、ひとりひとりを精査してみられたと思う。玉音放送を昭和20年8月15日正午に放送するためギリギリの攻防があったのだな、とこれは前回も思ったが、一回目にみたとき陸軍の人たちがごっちやになっていたのを最後の最後の東部軍参謀のふんばりなど具体的に理解できたし、内閣の事務方や外務大臣、情報局長などももっと深くしっかり理解できた。志村さんのセリフにある大日本帝国のお葬式という言葉にふさわしい劇的な、胸にくる作品であった。

日本のいちばん長い夏

 

日本のいちばん長い夏 [DVD]

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 wikipediaによると

文藝春秋』編集者の半藤一利が企画し、徳川夢声とともに司会を務めた戦後18年後の1963年6月20日に東京の料亭・なだ万で約5時間にもわたって交わされた座談会が開催された。内容は1945年の8月、敗戦の日にどこで何をして何を考えていたかを振り返るというもの。座談会の参加者は軍人や政治家、銃後の人など28名。『文藝春秋』1963年8月号に「日本のいちばん長い日」と題して掲載された。前号で「オリンピックの英雄たち」という日本人選手を集めた座談会の売れ行きが良かったため、マンモス座談会を続けようということで企画された[1]

この座談会をさらに掘り下げようと半藤が取材を加えて執筆し、1965年大宅壮一の名で出版され、後に映画化もされたのがノンフィクション『日本のいちばん長い日』である[1]

 

 とのこと。座談会を、文士劇で表現した映画で、「日本のいちばん長い日」の元というありがたみ、キャストの面白さなどはあったけれど(多分そこがメインで、演じている人たちが語る終戦の日という映像もはさまっている)、もとになった対談をそのまま読むほうが迫力がありそうだ。その元の対談及び「日本のいちばん長い日」に接するための映画と考えたほうがよさそう。徳川無声なども対談に加わっていたのだな・・

↓こちらが元

 

日本のいちばん長い夏 (文春新書)

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