1971年 ハル・アシュビー監督
自分の存在意義を死で確認したい衝動に駆られ続けるハロルド
お葬式をみにいくのが好きで(興味本位という感じではなくあくまで紳士的で好感はもてる)、そこで破天荒な老婆モードと知り合いになる。
登場時のモードの挙動不審な感じに観ている自分は警戒心が働いてしまったのだけど徐々に徐々にハロルドが打ち解け、モードとの時間に表情がよくなっていくのをみて、こちらもモードが好きになってくる。
乗り回す車、ファッション、部屋の飾りすべておしゃれで観ていて楽しい。
冒頭から禍々しいことばかり企てるハロルドの様子につけられた音楽がアコースティックでいかにもその年代の青年の惑いを表していて気持ちがいいし*1、途中からハロルドが出会う楽器がまたいい。
大金持ちの母親や、母親が見繕ってくる女性たち、そしてハロルドを鍛え直そうとする軍人のおじ、みな迷走していてあの年代の、価値が揺らぐアメリカを表しているように感じるし、そんな中にいるハロルドも随分不安定でいびつではあるけれど、魂の叫びが常に感じられバロック真珠のような輝きがある。
夢ものがたりのようでいて、向き合うべきもの乗り越えるべきものがちゃんと描かれ、ハッピーでもないけど不幸でもない気持ちの良いエンディング。好きな作品だ。