ザ・ペーパー

 

1994年 ロン・ハワード監督

NYの大衆紙を舞台のこの作品、「ER」とか、アメリカの良質のTVドラマと手触りが似ている。クライマックスに向け様々な問題が集約されマグマ的エネルギーで落としどころを模索→そして解決という職人技を感じる作品。

ロバート・デュバル演じる編集長の前立腺がんを告知されしんみりなる心境、年齢が近いだけによくわかる。最近ほぼ同世代と思ってきた人たちの訃報が重なりしんみりしようと思えばいくらでもしんみりできる感じ。これがこれから加速するのかと思うとこの気持ちに耐えてきた人生の先輩たちに改めて想いを馳せてしまいさらに想いに押しつぶされそうな日々。劇中でも家族など顧みずやってきた彼が告知以来、自分の人生をみつめるモードになってしまい、ほとんどほったらかしだった娘に会いに行くが娘はなんのことやらというシーンがあるが、この温度差の表現も気に入った。ほんと若い頃は親の突然のウェットなノリなど一顧だにできないものでその年齢になってやっとわかる心境。だから理解してもらえなくてもこどもを恨む必要はないし、なんだか親の弱気にクールだった自分をそう責めないでおこう、と、ちょっと自分を俯瞰できる。ロバート・デュバルは、マイケル・キートン演じる主人公がひょっとしたら陥る未来を描いていてアメリカ映画らしいまっすぐなわかりやすさで面白い。そして、ロバート・デュバルといえば、「ゴッドファーザー」で知性的なトムを演じていた俳優さんと気がつき、トムの姿も重なってますます趣深いものに。

グレン・クローズ演じる辣腕上司はコストカッター的で主人公から煙たがられているが、彼女の辛さや長所もちゃんと描かれ、共感できる演技。他にも新聞に書かれたことで散々な目にあった人間のエピソードなどもさらっと入れ、それがメインの事件ともちゃんとパラレルになっていて、巧みだし、みているうちにみんな幸せになってくれと願ってしまうようなこの頃合い、正統派アメリカ映画的楽しさを味わえた。