「ミュンヘンへの夜行列車」と「バルカン超特急」

英国の監督で脚本家であるシドニー・ギリアットのことがtwiterで話題になり、監督作品の「絶壁の彼方に」*1は楽しんでいたので脚本担当の「ミュンヘンへの夜行列車」を鑑賞。

 

この作品について同じくシドニー・ギリアット脚本でヒッチコック監督「バルカン超特急」の二番煎じだけどちょっと面白いなんてきいていたのだけど「バルカン〜」の方については、以前観た記憶からは列車で誰かがいなくなる、という部分だけしか頭に残っていなく、「ミュンヘン〜」をぱっと観た時にはどこが重なっているのやらわからなかった。

なので「バルカン超特急」の方も再見。

 

バルカン超特急(字幕版)

バルカン超特急(字幕版)

  • マーガレット・ロックウッド
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英国人とナチス(やそれを思わせる敵国)との攻防、といってもそんなにシリアスでなくてハラハラしながらも愉しむシーンの多い作品であるところ、そこにスパイも絡ませてあり、お嬢様ぽい勝気で芯のある女性が狂言回し的に出てくる要素、そして鉄道の登場、国境越えというエッセンスなどが共通点として感じられたけれど、当初きいたみたいな二番煎じ感はもたなかった。

検索してこちらのサイトなど拝見していると、冒頭のシーンが被っていて話題になっていたとのこと。改めて二作品の冒頭シーンを見直したら、スイス風の山小屋のようなところを俯瞰から映していってまるで人形劇のような始まり方をするところはそっくりだった。

ミュンヘン〜」は都合よく展開していくところもあるのだけど三谷幸喜の良くできた作品のような心地よさがあってその壮大なホラ話にのるのが快適、という気持ちにさせられる。ナチスの役人の言い訳なども三谷幸喜のご先祖的な香りがした。

ミュンヘン」より「バルカン〜」のほうがより盛り沢山に群像ドラマが仕掛けてあるが、両方に出てくるのが、自分の趣味にのめり込んでいるだけの英国人男性ペア。(wikipediaによると同じコンビだったらしい)このひとたちの動きが映画を盛り上げるし、英国映画の愉しさをとても味わわせてくれる。

「バルカン〜」を最初観たとき*2、ハラハラを愉しむ映画ということを理解しておらず、最後まで観て「ここまでの騒ぎは一体どういうことを本国に伝える目的だったのか?」などと野暮な感想を持ってしまったが、今回は大活躍するマイケル・レッドグレイヴはじめからんでくるキャラクター造形の伏線が素晴らしく生きる展開を堪能し大いに楽しめた。

この記事で言及した「絶壁の彼方に」「ミュンヘンへの夜行列車」「バルカン超特急」、いずれもふや町映画タウンのおすすめ作品。そうそう「バルカン〜」は舞台を架空の国に設定して、そこではこういうこともありという流れにしているのが「絶壁〜」と共通点だった。今回も「バルカン〜」を確認のため何度か部分的に見直したけれど繰り返しみればみるほど巧妙な伏線に気がつきさらにさらに楽しめた贅沢な作品。さすがヒッチコックって感じかな。