戦ふ兵隊、ルーペ

「戦ふ兵隊」の方はビデオパッケージによると、中国大陸での兵士たちを撮って、1939年に完成したが、軍の検閲で反戦的な哀感が強すぎるという理由で公開中止となったという。また、演出を手掛けた亀井文夫も41年治安維持法により逮捕・投獄され、その理由の一つにこの映画があったという。1975年になって発見された幻の名作とのこと。

「ルーペ」は瀬川順一というカメラマンのドキュメンタリー。(こちら参照)。瀬川カメラマンが、「戦ふ兵隊」の現場にいて、三木カメラマンと亀井監督の間で、「人道的に問題で撮れないものは撮れない」という事件があったということをお話になる。(亀井監督が、中国の民間人がこわがっている絵をとりたくて、こどもをとらえてその子を撮らせようとしたところ、三木カメラマンに抵抗されたことがあったという。三木カメラマンは亀井監督の手が入るとかいうことをいってたものの、実際はカメラマンが自分の意思を持っていいものかどうか、「カメラマンルーペ説」という議論が現場で巻き起こったという。)自分の目的のためよい絵を撮るためなら、手段は厭わない亀井監督の姿を知り、「戦ふ兵隊」をみるときもそういう気持ちでみた。(順番は先に「ルーペ」をみた。)もちろん「戦ふ兵隊」は、評価通り厭戦的なものが伝わるものであったが(ほんとの戦場ってこういうものか、という感じ。劇映画でみるのとはまるで違う心もとなさも感じた)、言葉による解説は、時々はさまれる短い文字のみによっている、静かなるこの映画の向こうに、瀬川さんの証言によって作り手の姿を感じた。
「ルーペ」で、瀬川カメラマンがお好きだとおっしゃって、よく使われている上弦の月が、「戦ふ兵隊」の中でも兵隊の影と月というとても印象的で詩的なシーンで出てきて、つながりを感じさせられた。

戦ふ兵隊 戦記映画復刻版シリーズ 9 [DVD]

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みたのはvhs版