小津監督の初トーキー作品とのこと。飯田蝶子が信州で苦労して育てた息子を訪ねて上京するストーリー。のちの「東京物語」と骨格は似ているように感じた。青雲の志で東京に出た担任の教師の現在の姿をながめるところは「秋刀魚の味」のごとし。戦後の小津映画のエッセンスが戦前の作品にすでに息づいているんだな。
上京してみたら息子は勝手に結婚していて・・と親にしてみれば筋を通してもらえない悲哀もあるのだけど息子にしてみれば故郷に錦を飾れないで人ごみに流されているような現状で報告せず、それが可能かどうかは知らないが、もうちょっとぱっとしてからにしたいという心遣いからくるのかもしれない。この「報連相」の欠如は。精一杯故郷のおっかさんをもてなしたい気持ちは伝わった。おっかさんはおっかさんで、できるだけ息子のことはいいように考えたいもの。故郷に帰っての思い出話、良い話しかしなくても嘘や虚栄はない。よくわかるなあ。
トーキーが珍しかった時代ということで途中おっかさんにトーキー映画を紹介するシーンあり。(宮崎祐治氏の「東京映画地図」によると、場所は帝国劇場だったよう。)
突貫小僧が息子の東京の住まいの近所の子どもとしてかなり出番多し。大事な役。「忘れられぬ人々」*1で晩年の姿をみて以来、突貫さんの出番をますます楽しめるようになっている。このいたずらっ子が晩年純情老人を演じるんだなとつながって。。
小津監督がゼームズ・槇名義でこの脚本を書いているけれど、脚本家のジェームズ・三木ってこの名前意識してのネーミングじゃないかな。。