「東京物語」みたいな、親がたらい回しになってしまって。。というストーリーなんだけど、こっちの方がキツい感じがした。「東京物語」では、上京した笠さん夫妻がこども宅をたらい回しっぽい感じになるものの夫婦二人で半分あきらめなぐさめあうという感じだったところが、この映画では父親の死後、母親と末娘がきょうだいのところを転々とし、どうにもうまくいかないわけで、高峰三枝子演じる末娘の偽らざるせりふやしぐさからお母さんが必死に耐えている感じが否応なく伝わってなんだかツラくなってしまう。末娘の立場も不安定だし。なんとなく「東京物語」の杉村春子とかの言い方は仕方ないな〜って気になっても、こっちの吉川満子のいいかたはキツいなぁ・・三宅邦子に至っては・・・*1でも、つらすぎてみられない、ってことは決してなかった。こういうもんだわなーという気にさせられる。いきなりの家族の転変などがごく淡々と当たり前のように描かれているのも小津安二郎らしい世界だと思う。最初の家族の写真撮影や、父親の訃報をきいてのきょうだいの反応でもうそれぞれの性格がきっちり描かれ、肝要なる細やかさ。母親の育てている大小アンバランスな植木がそれぞれきょうだいをあらわしているのかな・・あの構図や、部屋の衣紋掛けにかかっている帯や着物の配列などのアシンメトリーがとてもモダンだと思った。
また何度も写る廊下で、家はここで起きたことをじっと見ているという感じもある。ちょっと前にエットーレ・スコラ監督の「ラ・ファミリア」*2というイタリアの一家庭の歴史を追った映画でもそれを感じたのだけど、こういう時の層っていいな。
あと母と娘でふとんの綿を足しているシーン。小津安二郎の映画をみていると正しい生活のお手本をみている気がする。