野菊の如き君なりき

有名な「野菊の墓」のおはなし。それだけに、だいたいの流れは知っていたが、とにかく人のうわさ、集団圧力に潰されるほのかな想いが気の毒でならない。民さんの祖母を演じる浦辺粂子さん、とても心に残る。このとき50代前半だと思われ、共演の杉村春子さんともあまり年がかわらないのに、杉村さんより一世代上の役をされている。浦辺さんのことは、亡くなられてからだいぶしてから古い日本映画をよく観るようになり、そこに出てくる浦辺さんの仕事に感心することしきり。最近みたものでは、「ジャコ萬と鉄」*1で、高倉健の祖母の役。二人のシーンはとてもよかった。運命の前に仕方ないんだよというような表情を浮かべておられることも多いように思うけれど、とにかく映画に浦辺さんが出てくるとそれだけでアクセントになる。
主人公の十五歳の少年が老人になったところを笠智衆さんが演じておられる。笠さんの品で、この作品がさらによいものになっている。
またクライマックスシーンや、ごぜさんが来るシーンの影絵のような描写も心に残る。

この映画のロケ地について書かれた記事、興味深い。渡し船で行き来する風景が幻想的だった。撮影の本拠地になった長野の藤屋も興味があった。

木下惠介生誕100年 「野菊の如き君なりき」 [DVD]

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