ひげとちょんまげ 生きている映画史

昭和3年から映画を撮ってこられた稲垣浩監督が映画界や撮影所、スターのこぼれ話を書いておられるコラム集。読みやすく、元気で臨機応変な撮影現場の空気がこちらに伝わる。
戦前戦後を生き抜いてこられた監督、戦前の映画事情など初めて知ることも多い。

ふむと思ったメモ

映画をたくさん見たいという気持ちを満足させるために内務省の検閲官や、税関の官吏を志した者もあった

という一文。(p36)
三谷幸喜氏の「笑の大学」、あながち突飛な話ではないのだな・・

もう一つは、

 むかしは、どんな小さな場末の映画館でも、入場券の半分にそえてプログラムを一枚くれたものだった。
 それには上映時間の梗概とスタッフ、キャストの紹介から説明担当の弁士の名、それからゴシップ、ファンの投書などが印刷してあって、写真もいくつかはいっていて楽しいものだった。
 たいていは読みすててしまうような小さな紙きれだが、映画ファンはこれを宝物のように大事に保存した。切手収集の回のように映画狂があつまって、持っているプロを見せあったり、交換しあったりした。

あるとき、上映最終日にプログラムがなくくれなく、どうしてもほしかったので、稲垣さんは友人にワラジカツをおごって、一日だけ借り受け、徹夜でそのプロを書き写したということだったのだけど、「ワラジカツ」に反応してしまった。いまはなき、寺町のムラセのことを思い出して。看板のかっこいいお店で、当時デジカメがあれば絶対撮っていたのに・・(デジカメで写真を撮っておきたかったほかの店には「夜の窓」「大三元」「八百文フルーツパーラー」なども・・)