口笛の歌が聴こえる

四方田犬彦氏の「ハイスクール1968」*1に描かれていた東京の風景や、公開していた映画など、あの時代のテイストがすごく好きで、同じようなものを味わえる本をおたずねしたら本に詳しい方が教えてくださったのがこの本。昭和六十年に刊行されたのでちょっと当時の時代の空気の影響を受けてタッチが軽く、嵐山氏は四方田氏とはずいぶん違う時間の過ごし方をしているのだけど、80年代初頭に、「でR」とかいう文体で書かれていたり、テレビに出ておられた姿からはすぐに結び付かなかった、乱闘や金粉ショーやら、女との暮らしなどずいぶんディープな過ごし方が出てきている。そして、唐十郎安西水丸などの人々の姿がまだまだ若く友人格で出てきたり、また澁澤龍彦永山則夫つげ義春氏の奥さんの藤原マキさんなどが点景として、でも、息遣いが感じられる風に登場するのが興味深かった。
最後の、物語とその時の時事、流行を年表にしたものがとてもよくできていた。1969年の流行語「はっぱふみふみ」とか懐かしい。小説なのに巻末に人物索引があるのもいい。

口笛の歌が聴こえる (新潮文庫)

口笛の歌が聴こえる (新潮文庫)