この表紙をみただけの時、まさか林芙美子のおはなしだとは全く想像してなかった。桐野さんお得意のドロドロ系?の気配が漂っていて。。。
基本かなりきっちり林芙美子のことを調べて書かれた物語だと思う。おはなしとしてみていた映画の「浮雲」のストーリーなどがここで描かれている南洋での経験などを基礎にしたしっかりと骨格をもったものとして感じられた。
そして、話の中核となる戦争中の日本の統制ぶり・・今までいろんなもので接してはいたけれど、私はこの本で最も強くそのことのかなしさを受け取った。それはこの芙美子の描写がとても生き生きしていて、すごく感情移入できるものだからだと思う。ちょうどイランの厳しさを何よりリアルに受け取れたのは、深刻っぽいタッチで描かれたドキュメンタリー風のものからでなく、気楽に等身大的にはじまる「ペルセポリス」から、というのと同じ理由だろうな。
- 作者: 桐野夏生
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/02/26
- メディア: 単行本
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