津軽じょんがら節

昭和48年の作品なんだけど、今見ても全然古びていないし、津軽三味線が新しい弾き手によって注目されている現在、年代的には近くても中途半端にバブリーな昭和の終わりなんかにみるよりもずっときっちり理解できる映画ではないかなと思う。

この映画は、三味線の実録ものではなく、津軽の荒れ果てた漁村に東京のバーから戻ってきた女とわけありの男の物語で、村にいる人たちのきれいごととは無縁のやるせない現実を描いており、この概要だけではどんなに暗い映画かという感じなのだけど、斎藤耕一監督っていうのは本当に、いろんな立場に流れ流れてしまった人に宿る純情を描くのが上手で、しんどくなく、詩情豊かにストーリが展開する。映像の美しさはきいていたとおりで、映像に気持ちが託されていて全然どろどろしていない。

この映画をみているとなんか東北の民話をきいているような気になる。民話ってよくきいてみると、結構過酷なことが起きるのだけど、落ち着くところに落ち着くしかない、という感じをうけ、妙に心が平らかになったりする、あの不思議な平安が心に起きた。ちょっとカウリスマキやたけしの映画をみている時に起きる気持ちに似た感じも味わう。

盲目の女の子がでてきて、瞽女さんへのあこがれを語り、瞽女さんを描いていた斎藤真一さんの絵が使われているのだけど、それがとても効果的。

斎藤さんのことを調べてみたら、ヨーロッパの流浪の民へのあこがれがあったと書いてあるサイトがあり、 ああ なるほどわかるなぁ。。という感じ。
まるっきり定住民族な暮らしのわたしだけど、 流浪の民の暮らしぶり、音楽、衣装などにはとっても興味があるし、それに相通じるものをこの映画にも 強く感じ、自分の中のいろいろなものにヒットする作品だった。

若い頃の江波杏子もすごくよかった!あの眼力!
あの風景の中、朱がさすような存在感!すばらしい!
男の細やかな表情の変化もよかった!
そしてイノセントの象徴のような少女も。
表現力豊かな絵画をみたような気分になる映画だった。

津軽じょんがら節 [DVD]

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