中野翠さんの「中野シネマ」を読み返していてこの映画が取り上げられ、とてもほめてありみてみた。
韓国の伝統音楽パンソリに関する物語だけど、きれいな声だけではダメ、恨*1をにじませ、さらには恨を超えた声を出せ、そのためには視力さえも犠牲にしても、と鬼めいたところ、浄瑠璃の太夫にも通じるものを感じた。まさに、声色で物語をかたり、楽器(この映画では太鼓 浄瑠璃では三味線)で調子をとる、歌い手が苦しくなったときなど状況にあわせて楽器が盛り立てていく、というようなところが同じだ。旅芸人たちが歩く土地の風景も日本とも相通じるものがあり、郷愁を感じる。
「中野シネマ」によると、父親役(金明坤)と娘役(呉貞孩)はパンソリの達人でふきかえなしの演技とのこと。見事だった。
文字の周りに絵をかいて表現する文字絵(文字図)を作っているおじさんが、頑固なパンソリ芸人である父親との、残された社会との接点みたいにもなっていて、みているものとの距離をつないでくれているのだけど、文字図というものに興味を持った。wikipediaによると朝鮮民画のところに説明が載っている。
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*1:ハン 韓国文化のキーワードと思うけれどわたしには情念という風に解釈できるかなと思われた