関西が舞台になっている映画

関西が舞台になっている古い映画をみるのが楽しい。今の景色とくらべられたり、やはり地元意識からか、関西のゆるんだような空気が好きなので。。

先日、小津監督が関西で撮った「小早川家の秋」という映画をみて、先代中村雁治郎さんの演じる、放蕩をしてきた造り酒屋の大旦那はんの身のこなしの自然さ、おかしみのある味わいにうたれた私は、関西のシーンがあるということで、同じく小津監督の「宗方姉妹」というのもみたのですが、こちらは、平成に生きている自分から見ると、新しい価値観が押し寄せた日本で古いものを守ろうとしている田中絹代の自分を殺してまでのがんばりが、なんだか痛々しくみえてしまって、それをみてつらくあたるニヒリストの夫の気持ちに自分はむしろ近いような気分になってしまう映画だった。田中絹代の妹役の高峰秀子は、声色をかえておちゃらけてみせたり、なかなかおもしろく、コメディエンヌっぽくもあり、小林聡美さんもこういう方向の女優さんなのかもしれないな、などと楽しく想像が広がったりもしたけれど、映画としてはちょっと楽しめる要素が少なかったかな。。元特攻隊のバーテンダーの虚無や、田中絹代の夫の空漠感(猫ばかりをやたらかわいがるシーンが秀逸)などは伝わったのですが。。時を経てみたらまた違った感想をもつかもしれませんが、いまのところはそんな感じ。

小早川家の秋 [DVD]

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宗方姉妹 [DVD]

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「やっぱり雁治郎さんがみたい!」と、次に見たのが「ぼんち」。これはもっさりしたタイトルでかなり損をしている映画ではないかなぁ。。ものすごくよかった!(タイトルは、船場の若旦那として生まれたら自動的に「ぼん」と称されるけれど、気骨のあるものだけが「ぼんち」と呼ばれるという意味からきています。)市川崑監督がスタイリッシュ、ということはきいていたものの、今までには映画版の「黒い十人の女」でしかそのことを確認できていなかったのですが、冒頭から通天閣やグリコなど大阪を象徴する建造物の切り取り方、組み合わせ方のシャープなこと!なるほどこれか!と見惚れました!雁治郎さんは最初と最後にちょっと出て来るだけ。船場のぼんであった、市川雷蔵がひいきにしていて、その日の雷蔵のはなし相手になっている落語家の役でしたが、ものすごくナチュラルにあのストーリーの中に景色のようにとけ込んでおられてさすがでした。そして、はじめてみた市川雷蔵!評判はきいていたけれど、なんと魅力的に船場のぼんを演じていることでしょう!みる前は「ぼんち」ってタイトルから大人になりきれない人の話かと思いこんでいたのですが、女系家族にあってのらりくらりと優しくたくましく生きる姿はとってもかっこよく、わたしの心の映画に。女同士の争いはえぐく、船場のしきたりをかさにお姑さんたちが、嫁さんをいびりだしたり、ほんときっつい話も描かれてるけれど、しきたりに従っといたら一番ややこしない、とばかりにちゃんちゃんとしきたりは守り、でも自分の考えもちゃんともっているぼんの姿はすてき!ユーモアとラブリーさとスタイリッシュさ、そしてあきらめの先にあるポジティブさみたいなものがないまぜになったすばらしい映画!この愛すべき映画にであった気分、ちょっと前に鈴木清順監督の「河内カルメン」をみたときの気持ちとも相通じる。あれもすばらしき関西映画だなあ。

*映画ではないのだけど、NHKのドラマで「けったいな人びと」というのも好きだった。なんか織田作之助がカンケイしている話のように思ってしまっているのだけど、こちらをみると茂木草介さんの半自伝的作品。茂木さん、織田作のものよく脚本にされているけど、わたしの頭でまざっちゃっているのかな・・

ぼんち [DVD]

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河内カルメン [DVD]

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