白鷺(昭和16年)

こちらのブログに詳しく書いてあるのだけど、本来上映時間126分の作品を島津監督の弟子、豊田四郎監督が99分に縮めた再編集版を製作したようで、演出島津保次郎と並んで、再集豊田四郎との書かれている。
小村雪岱の美術考証が楽しみでこの映画をみてみた。確かに小村雪岱の作品のような画面がいくつもみられる。
日本画タッチを感じるような終幕↓
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一番感心したのはクライマックスシーンの入江たか子のはかなさ。ほんとに消え入るような・・
沢村貞子さんが姉芸者のような役どころでよい場面あり。
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杉村春子も若い男にコナかけたり悔しがったりする、なかなか若々しい役回り。新鮮。
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ひき逃げ

高峰秀子の演技力。どこから見ても子供を喪って思い詰めている母。
有閑マダム風の司葉子との対比もおもしろい。
高峰秀子の弟役の黒沢年男氏、こういう活躍をしていたんだ。
ドロドロしたサスペンス風でどうなるんだとひきつけられる。

突拍子もない連想だが、猫村さんって舞台はこの映画のようなところがあるなあ。司葉子の息子役の男の子のまっすぐな瞳が印象的。

獅子の座

昭和28年伊藤大輔監督作品。

ビデオパッケージより

宝生流十五代宗家宝生弥五郎に江戸開府以来第六回目という勧進能が聴許され、その日は将軍家慶も上覧することとなった。演目の“石橋”では太夫の弥五郎が長男石之助と一緒に親子連獅子を舞わねばならず、そのため幼い石之助に対する稽古は厳格を極めた。〜以下略

伊藤大輔監督はビデオに同梱された山根貞夫氏の解説によると、幼いころから能が好きだったそうで、ただ、ご本人の弁として「能のことを知りすぎていたので、題材に溺れてしまった」とのちに語っているそうだ。
yahoo movieのbakenekkoさんという方のコメント欄を拝見していると、“石橋”以外にも能の“羽衣”、“高砂”などが出てきていたらしい。(”熊野”というのも確認できた。)

田中絹代演じるところの石之助の母親 久の教育がキツくてしんどいものがあるのだけど、しごきに耐える息子役の津川雅彦*1は、けなげでなかなかよかった。今だったらカウンセリングが必要と感じられるほど追いつめられている姿がリアルだった。また、帝王教育とは無縁で、放任っぽく対照的に描かれる弟 重次郎も、いざとなったらなかなかの舞台度胸(“忠信”という演目)。長男と次男の違いは、中村屋の小さい兄弟のドキュメンタリーなどでも感じることある。重次郎を演じたのは木村国臣という役者さんのよう・・

こちらのブログを拝見していると、この映画でも出てきた津川さんの演じた宝生九郎の雷嫌いは有名な話だったらしい・・

*1:この映画では加藤雅彦の名前で出演 上述のbakenekkoさんのコメント欄によると12歳とのこと

檜舞台

昭和21年作品。戦争が終わって間もない頃の劇団。その描写がリアル。
瞼の母」を父親に置き換えたような・・と思ってみていたら、「瞼の父」と書いておられる方がいらっしゃった。(こちら
長谷川一夫の鏡獅子が見事。日ごろ、ふや町映画タウンの大森さんが長谷川一夫の所作をほめておられるけれど、なるほどくっきり感じた。

「連獅子」を以前シネマ歌舞伎でみていたので*1今、どこを演じているというのがわかったのもありがたかった。シネマ歌舞伎、良い企画だなあ。

お国と五平

yahoo 映画
昭和27年成瀬巳喜男監督作品。成瀬巳喜男監督の全作品が載っている「映畫読本 成瀬巳喜男」での扱いはあまりよくないが、わたしにはみるなり、さすが成瀬監督、端々まで神経の通ったなんと素晴らしい作品、という気持ちになった。
森雅之が、尺八はうまいが、武芸が達者でなく、武士道というものとは無縁の武士という役どころも新鮮。しかも敵役。

夫の仇を追う(といっても原因を作ってもいる)木暮美千代演じるお国と大谷友右衛門演じるおつきの五平。二人の心の揺れの表現がデリケートで見応えあり。仇を追い続ける旅の記録が単調にならないようにか途中で遭遇する旅芸人の結婚式や文楽(二代目紋十郎さん、二代目勘十郎さんなど昭和の名人が出演)のアクセントも良い。成瀬監督の映画、現代ものでもチンドン屋などのアクセントがよくきいているように思う。


成瀬巳喜男―透きとおるメロドラマの波光よ (映画読本)

成瀬巳喜男―透きとおるメロドラマの波光よ (映画読本)

鏡山競艶録

all cinema
1938年寿々喜多呂九平監督


しょっぱな日の丸と「国民精神総動員」の文字にものすごく時代を感じる。「この世界の片隅に*1の時代だなあ。

「鏡山旧錦絵」という歌舞伎作品(通称「鏡山」)を映画化したものということ。
そして「鏡山旧錦絵」は、人形浄瑠璃の「加々見山旧錦絵」がもとになっているとのこと。(現行の文楽は「加賀見山旧錦絵」の外題で上演され、歌舞伎もその名前で上演されることがあると、wikipedeiaに記載されている。歌舞伎についてはこちら。←この話はいろいろにかえられて演じられているとのことだけど、2020年文楽の「加々見山旧錦絵」*2をみて、映画でみたのとは色々違っていることに気がつく。)

昔の文楽舞台を録画したものでこの演目のハイライトシーンをみたことがあったので、だいたいの筋は知っていたが、今、「加々見山旧錦絵」の筋を読むと(こちら)ずいぶん長くて、映画はうまくまとめてあったなあと思う。

森光子さんが次女のお姫様だったらしいが、それと気が付かなかった。あとからみたら、なるほど・・可憐なお姫様だった。

敵役岩藤を演じた鈴木澄子さんという女優さんの憎々しいこと。話がとってもわかりやすい。
1960年にも同じタイトルで作られているようだけど、こちらをみると筋がだいぶ違っているなあ。。「先代萩」的になっているような・・

エノケンの誉れの土俵入 

エノケンが相撲取り・・体格的に?という感じだけど、相撲取りっぽい体格にも感じられない千恵蔵さんが相撲取りをしている映画「土俵祭」*1もあったし、小兵的な相撲取りもいるしな・・と頭の中で納得させる私。
とにかくエノケンが飛んだり跳ねたりの動作を楽しむ感じの映画。
加藤治子さんが御舟京子さんという名前でエノケンの相手役(田舎で仲の良かった女の子)の役をしているのが新鮮。松竹少女歌劇出身の新人時代だったらしい。 
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昭和15年中川信夫演出。製作主任市川崑

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