戦後70年 樹木希林ドキュメンタリーの旅『村と戦争』

樹木希林さんの訃報に接して、樹木さんって年齢を重ねられて尚一層すばらしい女優さんになられたな・・とつくづく思っている。現在の日本映画界で老年を演じる堂々としたポジションを築かれたと思う。そしてたとえば「あん」*1だとか、是枝監督の作品だとか、グラデーションをつけて老年を演じておられるのが素晴らしい。是枝監督作品では「海よりもまだ深く*2の樹木さんなんだか好きだったなあ・・

この夏、日本映画専門チャンネルで「戦後70年 樹木希林ドキュメンタリーの旅『村と戦争』」という番組を放映していて

www.nihon-eiga.com

靖国神社を訪ねていかれたり、吉岡忍さんと対談されたりしていた。樹木さん、以前クイズ番組で「行きたいところどこですか?」と尋ねられ、「竹島」と返事され撮り直しやらカットになったことがあったそう。「行ったことないけれど話題になっててどんな場所か知りたいから」というスタンス、靖国神社でもそういう感じで好感が持てた。なにかきいたところによると、「神宮希林」という伊勢神宮の方を訪ねておられるドキュメンタリーでも、町の人にいらないおみやげを差し出されはっきりいらないとこたえられているちょっとした押し問答みたいなシーンがおもしろいときいたことがあるのだけど、こちらは未見なのだけど、樹木さんならそうだろうなと感じられる。*3

「村と戦争」は所属集団に沿いたいという日本人の気持ちが嵩じて、みずから自己犠牲をおこない、戦争で功績をあげたいという風に駆り立てられた戦中の話が語られていたが、ほんとにこの心理の根っこはわたしにも根付いているし、大切なところを突いていると思った。

対談の中の吉岡さんの言葉も、やたら危機感をあおるでなし、もっと実際的に、戦前から戦争に突入していったあの感じが現代に起きるとしたら巧妙な形でやってくるからそれを警戒して。。(私の完全なる意訳)といったもので、その語り方も私は好感が持てたし、吉岡さんの書物などゆっくり読んでみたいと思っている。

*1:あん - 日常整理日誌

*2:海よりもまだ深く - 日常整理日誌

*3:実際にみてみて、そのおみやげが宗教的な意味合いもありそうな法被であり、固辞する気持ちがわかるなあ、でもなかなか熱心にすすめられる中で断り切れないよなとも思った。

あん

 「あん」というと、荻上直子監督の映画「めがね」*1で、もたいまさこが小豆を作っていたシーンが頭に浮かび、そういう系統の映画かと思いきや、まるで違っていた。そして、そこが良かった。それぞれ生きていく苦しみがあるにせよ、そこはさらっとの荻上流より、こちらのような、きっちりテーマがあってゆっくりそこに近づいていくスタイルの方が今の自分の気分にはぴったりあった。樹木希林永瀬正敏のお店でのファーストコンタクト、この、ちょっと普通のお客さんではないという感じの出し方、また永瀬正敏の受け方(戸惑い)のうまいこと。そのあとのあんを作っているところのドキュメンタリーっぽい撮り方もいい。

社会の中で自分の利害を超えて正しいと思うことを行ない続けることの困難さ、困難などという言葉で逃げてしまう情けなさ、そんなことが、この映画で描かれているハンセン病という題材を超えてさらに広くこちらに届いた。 

 

余談1:「はてな日記」から「はてなブログ」に移行してから関連作品というのが出てきて楽しいのだけど、この作品の一番の関連作品というとやはり「小島の春」*2だろうな...当時の観点だから人道的に作られているのにハンセン病についてもほんとにこの「あん」とは逆方向で・・

「あん」の中で、永瀬正敏樹木希林に対して同じく社会の外に閉じ込められたものとしての視点を持つところなどもよかった。女の子のカナリアの話ともつながっているんだなあ・・あの女の子(内田伽羅・・内田という名前が気になっていたがやはり樹木さんのお孫さんだった!)が、小さい子に読みかせするところとても良かったな。読み聞かせの声ってとても魂にしみわたる。そのあとのその絵本の扱いも彼女の置かれている境遇がよく出ていた・・

 

余談2:永瀬正敏演じるどらやき屋の店長が千太郎という名前なのも、音が一緒の最中のおいしい京都のお店「仙太郎」を連想させる。河瀨監督、奈良出身だし、まるで意識してないってことないよね・・このネーミング。

 

 

 

三谷幸喜のありふれた生活15 おいしい生活

和田誠氏の描く三谷氏のイラストも確かに年輪を増しているなあ・・

三谷氏にもこどもさんが生まれ、前夫人の小林聡美氏も好きなものでなにか勝手にあまり今の私生活のことは積極的にききたくないような心持ちだったけれど、そこはプロ、いやな感じではなくこどもが生まれたのをきっかけの、番組鑑賞鑑賞や昔話に触れてのエッセイなどさすが三谷氏の視点!と面白い。

高校時代に三谷氏が描いた近代文学史大会や内閣総理大臣大会、すごい才能。理系のクラスで落ちこぼれておられたようだが、いまの道が開けて本当によかった。わたしの好きな人って若き日の遊びから生まれたような習作がすごいと思う方多いな。(三谷幸喜みうらじゅん、そして、ノートはみたことないけれど、ジャック・ドゥミベルイマンの少年期として描かれる姿などに共通項感じる。)

三谷幸喜のありふれた生活15 おいしい時間

三谷幸喜のありふれた生活15 おいしい時間

 

 

大奥 15

ストーリーは和宮降嫁のあたり。先日、墓参りの時、和宮降嫁に自分のご先祖様も仕事で関わっていた話をきき、妙に身近な気分で読む。自分に和宮の知識がまるでないものだから、ここに描かれている和宮の話に驚く。いつもこの作品、飛躍はあるにしても基本ラインは崩さず、そう描かれる説得力を感じるからきっと和宮の話もそういう側面があるのだろうな。。ひどく興味を惹かれ、「和宮様御留」とか読みたくなっている。

そして篤姫宮崎あおいの大河、ちょっとしかみてなかったが、あの大河でみた断片的な姿とこの「大奥」の中の胤篤を重ねて読んでいる。先日も三谷幸喜の「江戸は燃えているか」*1という幕末物の芝居で、篤姫がちらりと尊敬される存在だったんだなと感じさせるようなシーンがあったのだけど、そのこととこの中の胤篤のイメージは結構一致していて、篤姫のことももっと知りたい!という気分になっている。

井伊直弼なども歴史もの番組で最近解釈されている姿となかなか近似値で、ほんとかなりきっちり描いている作品だなあとつくづく思う。

 

大奥 15 (ヤングアニマルコミックス)

大奥 15 (ヤングアニマルコミックス)

 

 

 

東京タラレバ娘 9、海月姫 17

両作品とも最終巻。東村アキコ氏、読ませる才能ものすごく感じる。東村さんに向けられる批判として途中でめんどくさくなってなんかちゃちゃっと終了するというようなこともきくけれど、「東京タラレバ娘」も急にまとめに入り、いい話に転換してあったのはおかしかった。(この結論はどこから決めていたのか、それなりに説得力はあった。)本編の終わった後にいつも「タラレBar」といって読者からの相談に答えるところがあるのだけど、今回も、本編はいい話でまとめつつ、この「タラレBar」は東村さんの本来の面白さ、読者に喝を入れる毒舌が炸裂していた。(それも多分言われた方もにやにやしてしまうような、うまい按配で。)

海月姫」も前の巻だったかシンガポールのくだりなどかけ足すぎたけれど、最終巻は夢のあるかわいい話として持ち直していた。話の決着のつけかたもよかった。

海月姫」のあとがきにあった、洋服を昔から作っていた東村さんの話、こういうしっかりものみたいな部分がこの人の魅力だよな。

 

 

 

海月姫(17) (KC KISS)

海月姫(17) (KC KISS)

 

 

 

ちはやふる 35-38

 少し前から起承転結の転の部分に入っている気がしたが、35巻あたりからまた潮目がかわっているような感じ。今まで目立たぬところにいた太一がのしてきているけれど、”王者”の新(あらた)贔屓の私。新の弱点めいたものが描かれているのも、ドキドキしながらも今のところ楽しめる範囲。

16歳の千早に先生がかけた「速く取るのをやめなさい」の言葉の意味が千早の2年後に読者である私にもやっとわかってきた。この話寝かしてあったんだ。。

ちはやふる(35) (BE LOVE KC)

ちはやふる(35) (BE LOVE KC)

 

 

 

ちはやふる(36) (BE LOVE KC)

ちはやふる(36) (BE LOVE KC)

 

 

 

ちはやふる(37) (BE LOVE KC)

ちはやふる(37) (BE LOVE KC)

 

 

 

ちはやふる(38) (BE LOVE KC)

ちはやふる(38) (BE LOVE KC)

 

 

荷車の歌

www.p.pia.jp

ぴあのアプリに出ていた古書往来座ののむみちさんの記事を読んで見ることにしたが本当にうなづくことばかり。 酷な場面もテンポよく入り込める構成。大河ものすきな私にはうってつけの作品。

何よりかにより主人公の長女を演じた左民子と左幸子本当にすばらしい。

奈良岡朋子氏が、派手な仇っぽい稼業というのも珍しい気がした。

wikipediaによると

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山代巴の代表作である同名小説を映画化した作品で、全国農業協同組合の婦人部が一人10円のカンパで3200万円を集めて製作された。この映画は全国各地を長期間にわたって巡回して上映され、多くの観客を動員した。

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三次という名前、また運搬の積み込み地としてでてくる船の停泊地の様子、倉敷の紡績など、西の土地土地の名前に親しみをおぼえる。(ロケ地は広島ではないようだが。。)

 

 

荷車の歌 [VHS]

荷車の歌 [VHS]