あん

 「あん」というと、荻上直子監督の映画「めがね」*1で、もたいまさこが小豆を作っていたシーンが頭に浮かび、そういう系統の映画かと思いきや、まるで違っていた。そして、そこが良かった。それぞれ生きていく苦しみがあるにせよ、そこはさらっとの荻上流より、こちらのような、きっちりテーマがあってゆっくりそこに近づいていくスタイルの方が今の自分の気分にはぴったりあった。樹木希林永瀬正敏のお店でのファーストコンタクト、この、ちょっと普通のお客さんではないという感じの出し方、また永瀬正敏の受け方(戸惑い)のうまいこと。そのあとのあんを作っているところのドキュメンタリーっぽい撮り方もいい。

社会の中で自分の利害を超えて正しいと思うことを行ない続けることの困難さ、困難などという言葉で逃げてしまう情けなさ、そんなことが、この映画で描かれているハンセン病という題材を超えてさらに広くこちらに届いた。 

 

余談1:「はてな日記」から「はてなブログ」に移行してから関連作品というのが出てきて楽しいのだけど、この作品の一番の関連作品というとやはり「小島の春」*2だろうな...当時の観点だから人道的に作られているのにハンセン病についてもほんとにこの「あん」とは逆方向で・・

「あん」の中で、永瀬正敏樹木希林に対して同じく社会の外に閉じ込められたものとしての視点を持つところなどもよかった。女の子のカナリアの話ともつながっているんだなあ・・あの女の子(内田伽羅・・内田という名前が気になっていたがやはり樹木さんのお孫さんだった!)が、小さい子に読みかせするところとても良かったな。読み聞かせの声ってとても魂にしみわたる。そのあとのその絵本の扱いも彼女の置かれている境遇がよく出ていた・・

 

余談2:永瀬正敏演じるどらやき屋の店長が千太郎という名前なのも、音が一緒の最中のおいしい京都のお店「仙太郎」を連想させる。河瀨監督、奈良出身だし、まるで意識してないってことないよね・・このネーミング。