「狂った野獣」、「さらば、わが友 実録大物死刑囚」

先日亡くなられた中島貞夫監督の作品を二本。

まず、京都の路線バスが舞台ときいて観た中島貞夫監督の「狂った野獣」(76)、こちらびっくりするほど面白かった。

70年代の京都駅八条口付近や京都市バスの停留所看板も懐かしいが、アフロヘアー時代の鶴瓶のラジオ放送の様子、三上寛のライブなども時代の空気をたっぷり吸い込みすごい躍動。渡瀬恒彦のかっこいいばかりじゃない体を張った演技、個性的な乗客とにんまりさせられる結末など大傑作。乗客の中のチンドン屋の演奏なども随所に挟み込まれ、ファンキーな魅力。

続いて、「さらば、わが友 実録大物死刑囚たち」(80)も観てみる。

死刑囚の獄にいたが法廷闘争の末、無期懲役になった著者の手記をもとにした物語。冒頭の恐喝シーンに人相の悪い役所広司が主人公に使われるカタチで出てくる。

役所広司が銃で気弱そうな人物をおどしているところはなかなか凶悪で、犯人側を応援する気などさらさら起きないのだが、この磯部勉という俳優演じる主人公はなかなか冷静で計算がたち、だんだんに好感が持てるようになる。

拘置所で同房になるのは荒井注。そこはさらっと終わり、いよいよ収監される刑務所、しょっぱなから気の利いたふるまいをする室田日出男がすごく味がありかっこいい。わたしの中でベスト室田かも。「終身犯」*1バート・ランカスターみたいに小鳥を飼っている。のちに永島敏行と小鳥のシーンもあったり、主人公の犯行場面でもオウムかインコが出てきたり、中島監督、かなり「終身犯」に感銘を受けられた?

帝銀事件三鷹事件加賀乙彦の「宣告」のモデル(正田昭・・若き石田純一が演じる)など出てきたり、主人公は獄中で法律を勉強し、自らの裁判で証人尋問なども行うなど描かれている内容もユニークで、絶対原作面白いと思われるのだが、後半は人情的な風味に力をいれ、映画自体の躍動感などは少なめ。さらっと小さくまとめてある感じも。