すばらしき世界

 

前科のあるひとの更生もの、アル・パチーノの演じた「カリートの道」などでもハラハラしっぱなしになったのだけど、この話の中でも刑務所から戻り世間からの冷たい風当たりを役所広司演じる主人公が受けるたび祈るような気持ちで観続けた。でも「カリート〜」のように結局は傍観者的な立場で作品を消費するのでなく、自分はこの作品に出てくる世間側の人間としてどんな風に対応できるのだろうということを大いに考えさせられた。取材者としての安全な立場からのつきあいを問い直しさせられる仲野太賀の責められっぷりが突き刺さる。保護司である橋爪功の、ピュアに堕しない態度にプロっぽさを感じる。北村有起哉演じる役所の人は役所の人でただの「お役所仕事」を行う仮想敵のような存在としての描き方ではなく、その範囲を踏まえた上での努力が節度を持って描かれていて好感が持てる。出てくる人みんなそれぞれの限界を抱えつつ、出会ってしまった役所広司にどう対峙するのかというその描き方が誠実でとても好感を抱く。それはなにも元犯罪者と市民との関係だけではない話だと思う。主人公役所広司の魅力と達者な演技陣によってひょっとしたらファンタジーといわれるかもしれないような心に触れる美しいシーンをそのまま受け取りたくなる吸引力。役所広司がただ善良な人ではなく暴発しそうな何かを常に漂わせているところもいい。気持ちよく心を動かされ作品に持っていかれた。

構成にはちょっと「わたしは、ダニエル・ブレイク*1を思い出すようなところも。