浪人街 RONINGAI

 

1957年版の「浪人街」*1マキノ雅弘監督)を観たので忘れないうちに1990年版(黒木和雄監督)も。こちらもマキノ雅弘が総監修したとのことだけど、観る人がわかりやすいような筋にかえられていて(つまりわかりやすすぎて安易になったりしていて)、筋立ては絶対57年版の方が良かった。

田中邦衛演じる仕官を待って兄妹で長屋住まいをしている浪人の暮らしが57年版より詳しくなっている部分はよかったが(鳥の面倒をみて生計をたてる姿が細やか。このエピソードは90年版のオリジナルのように思う。)前回の先祖伝来の刀を巡っての騒動という部分がなくなっており、この因縁の有無が原田芳雄演じる荒巻源内の印象を前作と大きく変えている。そのエピソードゆえに57年版では源内は人でなしって感じなのだけど、90年版は源内に自然と好感を持つように作られている。

樋口可南子演じる源内の情婦お新も57年版のスリから、女郎に。原田芳雄樋口可南子のスター扱いをみる感じの映画に。

石橋蓮司演じる母衣権兵衛がなかなかかっこいいのだけど、彼とお新の関係も57年版の方がずっと秘めたる思いがあってその分のエネルギーがもうたまらなく良かったし、母衣のかっこよさがさらなるものだったのに、それにくらべると母衣の価値が下がるような描写。原田と樋口の映画になってしまっている。

見知った顔が出てくる楽しさはあり、親しみやすさはあった。そして、天本英世演じる琵琶法師のシーンなどは美しい映像とともにこの世に起きることどものはかなさを感じさせ効果的だった。宮川一夫氏が特別協力として名前が出ているけれどどういう形の協力だったのかな・・

勝新太郎演じる赤牛弥五右衛門も、この作品勝さんの遺作だったらしく、ちょっといつもの力ができってないような印象も。声などが残念ながら弱弱しかった。赤牛弥五右衛門のくだりも前述の刀の話がないからかなり筋がかわっていて、元の方が面白かった。女郎に文字を教えてやるというエピソードなどは多分90年版のみでこういうシーンは良かったが。

全体的に90年代のお客が咀嚼しやすいように作り変えてある印象が強かった。

屋台の主人役の長門裕之は、マキノファミリー登場!という感じで嬉しかった。勝新太郎との関西談義の味わい。(勝さんは千葉県出身らしいが、赤牛弥五右衛門は関西の色の濃い人物であった。)