「花束みたいな恋をした」と「一度も撃ってません」

最近気になっていた作品がwowowで放映されたので鑑賞。

一作目は「花束みたいな恋をした」

 

「カルテット」「大豆田とわ子と三人の元夫」など脚本ドラマの発想が面白いなと感じている坂元裕二の脚本作品。

 

 

 

この二作品でも日常生活のその人の嗜好などの細部を描くことでその人を浮き上がらせる描写がうまいが、この映画でも「こういうものが好きな人」ということでその人をピンと来させる。

20代のお話で、60前の自分からみると、ちょうど同じ年ごろの子どもたちはこういう感じなのかななどとハラハラしながら見守った。

ブックマークしているブログ「私の中の見えない炎」に土井監督のトークショーのレポートが載っていて拝見。

ayamekareihikagami.hateblo.jp

ここで監督が語っているように、病気だとかドラマチックな出来事をバネにしていないところがこの作品の良いところ。二人の時の経過はとてもリアルに感じられる。

今二人の第一章が終わったところ、さて・・という気持ちになった。

 

もう一本は「一度も撃ってません」

 

石橋蓮司氏が売れないハードボイルド作家を演じる作品。阪本順治監督作品。石橋氏が好きなので観てみたいなと思っていた。石橋氏の、オールドファッションにキメた姿、なかなか良い。作家を作品とからませて・・というところは「ハメット」*1のパロディのようにもみえる。若い編集者からのツッコミは、私がいつも子どもたちと接していると感じるようなもので苦笑い。ツッコミ主は寛一郎氏。佐藤浩市氏と親子共演であった。

石橋さんを観ていると阪本監督の「大鹿村騒動記」の舞台挨拶の時、病気が進んでいた原田芳雄氏の挨拶を代読されたお二人のつながりを思い出す。

 

物語の主要な舞台であるバーの表札の文字デザインも原田芳雄氏だったようだし、あとで調べたら若松監督で原田氏主演の「われに撃つ用意あり」を下敷きにしているらしい。監督や原田氏にゆかりのある人たちが楽しんで作ったものという感じがした。

 

せっかくだから「われに撃つ用意あり」の方もこの機に鑑賞。

こちらは本物の風格、若松監督の力量をとても感じるものだった。新宿騒乱の頃機動隊を追われた面々が青春の終わりかけの日に閉店する原田芳雄氏のバーに集まって・・というストーリー。「泪橋*2などとも描いているものは並列しているように感じられる作品だが、格段に見せる力があると思った。

テンポが良く迫力がある。大写しになる桃井かおり氏の表情の複雑で可憐なこと。石橋蓮司氏の原田芳雄氏の盟友らしき影法師としての徹底した道化姿と物語の原動になるパワー。撮影当時(1990年公開)の新宿の様子の活写。

「一度も撃ってません」は確かにここから派生した物語だった。「一度も撃ってません」のラスト近くに映る絵は「われに~」の桃井かおり氏がモデルだ。

刑事役蟹江敬三も抑制のきいた熱い演技でとても印象に残る。