「才女気質」と「愛妻物語」からの「ある映画監督の生涯 溝口健二の記録」

京都が舞台になる50年代の邦画を二本観た。
中平康監督の「才女気質」(1959)

と「愛妻物語」(1951)

才女気質」の方は、京都の老舗珈琲店イノダコーヒが登場するので、以前京都みなみ会館の「映画の中の素敵な店」特集で鑑賞していたが20年以上ぶりで再鑑賞。
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轟夕起子さんが演じる才女のいかつさに当てられたという印象のみ残っていたのだが、今回一見尻に敷かれイノダで現実逃避しては怒られている大坂志郎氏演じる夫のフォローがとても目に止まった。その母を吉川満子さん。多分老けづくりで松竹映画でよく見てきた「母」という雰囲気と違う感じだし、面白いセリフは全部彼女。家庭内のわさわさを切って捨てる言葉にすっとしてしまう。皮肉でしっかりもの、そしてどこかおかしみがある置き屋の老女将を面白く演じている。
轟夕起子氏の軽くて頼りない次男役に長門裕之氏。ひょんな感じで就職するのが大阪テレビ。実は自分の親族にも大阪テレビに縁のある人間が複数おり、にやにやしながら鑑賞。
今回は前回はスルーしていた中国大陸からの帰国者の扱いが目に止まった。本土での受け止め方がちょっと滲み出ている気がした。

「愛妻物語」は新藤兼人監督の修行時代を描く御本人初監督作品。「日本映画傑作全集」vhsでの鑑賞。
先日「乙羽信子の生涯」という
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乙羽さんの三回忌記念のビデオをふや町映画タウンで借りてみたのだが、「愛妻物語」からの映像も多く、どうも京都が舞台のようなので、こちらも観てみた。新藤氏の初婚(内縁との説も)の話で、このあと二回結婚され最後がこの映画で愛妻を演じている乙羽さんか・・とかつまらないことを考えてしまった。滝沢修が演じる坂口監督という人物がいて、これが溝口健二のことだということ。自分のイメージ通りだったこともあり、以前観た新藤監督の「ある映画監督の生涯 溝口健二の記録」も再見。

初回に観た時からの記憶は、溝口監督が田中絹代に恋愛感情を持っていたか田中絹代に迫るシーンと監督が亡くなられた京都の府立医大病院の風景のみ。あれから少しは映画を観た数の蓄積も増えてきて、今回は、溝口監督にひどい言葉を浴びせられた入江たか子がインタビューにこたえているシーンの大人っぽさ、助監督を務めていた増村保造監督のクールな分析、永田雅一伊藤大輔監督の話しているところ、木暮実千代の様子など、75年当時だからこそ撮れた貴重な記録の数々に感動した。

そうそう「愛妻物語」に戻ると、大河内傳次郎が役名なしで登場人物の中に挙げられている。多分撮影所のこのシーンかな・・
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