undo、心の傷を癒すということ

 

 

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 みたのはVHS

twitterでこの映画の紹介をされている方がいらっしゃり(こちら)気になってみてみた。

1994年公開。岩井俊二の映画監督作品としてはとても初期の頃のものだ。

豊川悦司扮する男性と暮らす山口智子扮する女性が、田口トモロヲ扮するカウンセラー(とwikipediaにはあったが、精神科医にみえた)のいうところの「愛の病い」にかかり、あらゆるものを縛っていかなければおれなくなる。。どんどんエスカレートしていき・・ 

ふと思い出したのは、テレビのドキュメンタリーで見た縄師の人の話。山口智子演じる女性が綯う縄は、縄師の人の仕事を思い出すくらのものだったけれど、トヨエツ演じる男性の縄は一見芸術的ではあるけれど田口トモロヲ演じる医師にアドバイスされ彼流でやってみたもの。あの縄のさまにそれぞれの境地が端的にあらわされていたなあ。

思春期の頃は、この女性のようにあっち側にいってしまえる人への無責任なあこがれがあったけれど、大人になってしまった今、孤高の域に達する大変さはしっかりわかる。そしてどちらかといえば、子どもの頃に読んで鵜呑みにしているヴィヴィアン・リーの愛情についていけなくなったローレンス・オリヴィエの気持ちがわかってしまうような、結局他者にそこまで巻き込まれたくない自分がいるような気がしてはっとする。。だが、しかし、あの女性の、男性の綯う縄に対しての気持ち(本気であたってほしい)はすごくわかる。 

話は飛ぶが、この作品の田口トモロヲ扮する医師だかカウンセラーだかの、自分は安全なところにおいておいて半笑いみたいなのは自分が心理学科卒というのも手伝ってか、なんだかとっても気にかかる。もちろん精神医療というのは、医師や治療者側への感情の転移があったり、難しいもので、巻き込まれてしまってはいけないし、関わり方が難しいのはわかるけれど、簡単に解決できない問題が横たわっているのであればあるほど医師が上から患者を見下ろすというのはおかしい話だと思う。でも時々そういうことがあるのではないだろうか・・

というのは、ちょうどNHKで「心の傷を癒すということ」という精神科医の素晴らしいドラマをみたところで、簡単に解決しなくても寄り添うこの姿勢こそが尊いと思われるから。このドラマ、神戸の震災、精神科、しかも主人公の安先生は在日韓国人、その上安先生は病気になられ、と、観る前にその情報だけ入ってきたらありがたいけれど、しんどいものと勘違いされそうなものだけど、柄本佑が、とても実直に硬すぎずよい感じで安先生を演じていて、また友人を演じる濱田岳とのジャズ好きの交流なども素晴らしく、ほんとに程よく味わえる素晴らしいドラマだったから。スタッフブログに載っている安先生も柄本佑に似ているし、安先生の蔵書などをそのまま生かした撮影など(こちら)も素晴らしい。石橋凌さんやキムラ緑子さん演じる両親の感じも、ほんとに在日韓国人で苦労して事業を大きくしてこられた方の感じがとてもリアルに出ていて、なんとよくできたドラマだと思っている。

最終回の再放送はNHK総合で2月13日(木)午前0時55分~1時44分(水曜深夜)

Eテレ・3月1日(日)あさ5時からの「こころの時代」では安克昌さんが生涯をかけて目指した「傷つきに優しい社会」とはということで同僚の医師、中学からの親友・名越康文さん、ご家族の証言で安医師の世界に迫る番組があるそう。

すごい入魂のドラマだと思うし、賞をとるのでは?いやとってほしいドラマ。再放送の際にはたくさんの方にみてもらいたい作品だ。

www.nhk.or.jp