ブロークン 過去に囚われた男

2014年アル・パチーノ主演作品。パチーノ氏演じる錠前屋のマングルホーンは、昔は少年スポーツのコーチなどもしたり、また錠前の仕事で人の役にもたったりで、周りからそれなりに信頼や尊敬をうけてはいるのだけど、失われた恋愛に拘泥、根っこのところでは虚しさを抱えている。スポーツのコーチをしていただけあって、考え方には筋が通っているけれど頑固で、せっかくのホリー・ハンター演じる銀行員とのデートも自分本位なノリで、台無しにしてしまったりする・・そんな人間のドラマだけど、ディテイルの表現がとにかくうまい。ホリー・ハンターの家での不器用なふるまい、カフェテリアみたいなレストランでの残念な話題選び・・それをきいたホリーの表情・・また、息子には厳しいが孫には優しいマングルホーンの公園での孫との語らいの姿は、どこかドラマ「早春スケッチブック」の山崎努と二階堂千寿との、強面な男のもつ純な部分をあぶりだすことになる少女とのシーンみたいで印象的であった。
そして飼い猫!孤独な男と猫のとりあわせは「ハリーとトント」や「ロング・グッドバイ*1でも印象的だったけれど、ほんとさまになる。猫とパチーノ。パチーノ氏の猫の扱いもとても細やかで、猫や孫へのプレゼントのぬいぐるみとパチーノ氏という2ショットが心温まる感じで長年のファンにはちょっとうれしかったりする。
ラストの銀行でのシーンの伏線となるシーンが中盤にあるのだが、そこがとても素晴らしく、決め込んでしまって心を閉ざすことへの抵抗、というこの映画のテーマが感じられる。
派手な部分はないが、それゆえ、良質の短編を読んだような気持ちになる一篇。

IMDb

アル・パチーノ ブロークン 過去に囚われた男 [DVD]

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