ポルノ時代劇 忘八武士道

忘八者とは、「八犬伝」のテーマでもあった「仁義礼智忠信孝悌」の八つの徳目をすべて捨てた連中という意味とのこと。
小島一夫の原作劇画を石井輝男が映画化。劇画を映画化したテンポ、ほんと裸だらけでナンセンスだけど70年代の空気が横溢しており、力があふれ面白かった。主人公役の丹波哲郎はおかみに追われる身ながら、忘八集団を束ねる吉原の経営者にかくまわれ、吉原の利益を損ねるものを鬼包丁なる大刀で斬りに行く。丹波哲郎演じる主人公は、自己の中に線引きがあるゆえ、歌舞伎などに出てくる、肩入れしたくなるヒーロー的存在(「夏祭浪花鑑」*1の団七風)。白い衣装がきまっており大詰めの決戦の場の雪の中のシーンなども歌舞伎のようなケレン味。昔の歌舞伎はこの映画みたいなあやしさも秘めていたのではないかなとも思った。
樋口尚文さんの「ロマンポルノと実録やくざ映画」の、この作品と同じ石井輝夫監督の「怪談昇り龍」(1970)の項に、「キル・ビル1」のラストは同じ梶芽衣子でも「修羅雪姫」が原点といわれるが、「怪談昇り龍」の方ではないか、そもそも敵役がオーレン「石井」である、というようなことが書かれているが、この映画もとてもタランティーノ的であった。
若き伊吹吾郎さんも新鮮。