三十三間堂・通し矢物語

ずいぶん前に一度観たのだけど、再見してその時の印象よりずっと楽しめた。多分その間に実際の三十三間堂に行ったり、少しは古い日本映画も観るようになって、楽しみ方も増えたからかな。。開幕の、三十三間堂のお寺の説明からすっと物語に入る構成、そして、それぞれの登場人物の事情が敵役も含め丁寧に描いてあるところがとても良い。とにかくトラブルを回避するためなら金での解決もいとわない田中絹代扮するお絹の発想などもおもしろい。武士道的な価値観と商家の価値観の対比。小国英雄脚本の評判はかねがねきいているが、これもさすがの出来だ。

普段よくみるのは江戸が舞台の時代劇なもので、町の人々のナチュラルな京都弁が新鮮。
田中絹代の、しっかりものだけどまだまだ長谷川一夫扮する謎の男とのほのかなロマンスも自然な感じをみていると、可憐で頼れて親しみやすい、と皆に思われていたであろう田中絹代の、7年後の「西鶴一代女*1インパクトの強さも少しわかるような気がした。なんというか、アステアの全盛期の映画をみてから、「バンド・ワゴン」*2をみたときに感じる、人気落ち目のダンサーを、しかもリアルにも一旦引退していたアステアが演じるプロ根性への敬服のような気持ち。

みたのは東宝から出ていた「日本映画傑作全集」のVHSにて。

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