盗まれたリアル

インタビューというものは、インタビュアーの資質によってずいぶんかわってくるものだと思う。受け手側に準備がなくては相手から充分なものはひきだせない。この本はそういう意味で聞き手の長谷部さんがものすごく演劇のことに詳しくそして、変に遠慮したりせずずばずばと相手に切り込んでいくもので90年代演劇人のプロフィールをかなり深く描けていると思う。エッセイをよく読んでいる松尾スズキさんの話がさーっと理解できるのは当たり前だけど、80年代に舞台をよくみにいきながらも もうひとつわからなかった野田秀樹さんのことなどもやっと輪郭が
つかめてきた。宮沢章夫さんは、著作を読んでおもしろいのだけれど、煙にまかれるような気分になりがちだったのだけど、今回の対話では、その煙にかなり肉薄しているような気がする。
深い内容をかみ砕いて書くことのできるインタビュアーの長谷部さんはほんものなのだろうなと思った。