シティ・オブ・ゴッド

シティ・オブ・ゴッド」を手に取ってみたのは、映画評などで、よい評判を読んでいたからなのだけど、「犯罪アクション」などという分類テープが貼られていて、予備知識がなかったらなかなか手を伸ばさなかったかもしれない。リオデジャネイロの一角にあるスラムが舞台の、事実をもとに作られたストーリーなのだけど、こどもの頃から銃とも薬ともなれ親しんだ人たちが出てきて、抗争シーンや、人が殺されるシーンもいっぱい。ただ、それが、DVDの解説にもあったのだけど、ショー的な殺され方をする、とかでは決してなくて、「ここではこうするしかないんだよ!」という感じがとってもして、骨太で、乾いていて、でも心を動かされて、手もとにおいて何度か見返したいような作品となった。

一番気に入った「ショー的ではない」という部分なのですが、「ゴッドファーザー」や「スカーフェイス」などのギャングもののパッションやそこにみられる様式美も大好きな私ですが、描かれている世界はそれらと同じでも切り口がかなり違う感じがし、私はそこに惚れました。劇的なシーンでもりあげる音楽だとかもなければ、重要人物の一大事にも長回しの映像などはほとんどなし。ギャング的行為を美化するでもなく、感傷に浸るわけでもなく、前向きな解決をはからせてしまうわけでもないところが、なんとも新しくて、魅力を感じた。

様式美がないところが、また美しく、とっても貧しいのだけれどなんともきれいな風景とか、血みどろの抗争中の向こう側にかいまみえる普通の生活の美しさだとか、人の生き死にに関係している重たいシーンなのに、さりげなく響くブラジルの音楽だとか、疾走するカメラワークだとかとても素晴らしく、あの世界にいつまでも漂っていたいような気分になる映画だった。

そして、これもDVDの解説できいてはっとしたのだけど、ブラジルというのは悲劇的なことを悲しみながらも笑えるところがある、ということ。この映画もそういうタッチがすごく色濃くある。人間のおろかさへの絶望というよりは笑い、という感じ。何人ものタイプの違う青年たちが、それぞれに弱点をかかえて、自分なりに自分の人生を生きている、という感じもとても私ごのみだった。青春ものとしても鑑賞できるのではないか、と思える作品。

シティ・オブ・ゴッド DTSスペシャルエディション (初回限定2枚組) [DVD]

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