脇役本

 

脇役本 増補文庫版 (ちくま文庫)

脇役本 増補文庫版 (ちくま文庫)

 

 脇役俳優の出版した本から脇役俳優の経歴や趣味などを探るのが脇役本のたのしみ方だけど、この本は単なる著作の紹介ではなく、当該の脇役俳優がどういう人とどういう仕事をしたかが綿密に調べられていて、そこがとても面白く、旧い邦画を好んでみているものには何度も参照したい本。この本が縁で加東大介さんの主演映画「南の島に雪が降る」にも出会えた。

参考にしたい事柄はたくさんあれど、とりあえずひとつだけ。大好きな加藤嘉さんの顏を撮った絵本「ぼくのおじいちゃんのかお」

 

ぼくのおじいちゃんのかお (幼児絵本シリーズ)

ぼくのおじいちゃんのかお (幼児絵本シリーズ)

 

 の撮影をされている沼田早苗さんは、若いころから年配の男性の肖像写真をライフワークにされていて、小沢栄太郎志村喬嵐寛寿郎といった老優たちの「かお」も作品になっているそう。志村喬さんの脇役本「記録 志村喬」には、「俳優志村喬」という沼田さんのエッセイも収録されているとのこと。とても興味があるなあ。

 

あと八代目市川圓蔵というひとのことが気になった。地味で暗いとの評判で芸の方は人気がなかったけれど、死にざまが・・という話だったのだが、90代の父にたずねると、芸の方、そんな悪い印象がない、立派な役者さんだったと思うとのことでなにか救いを感じた。

犬を飼う そして・・・猫を飼う

 

 巻頭に載っている「犬を飼う」は老いた愛犬の看取り・・人間も動物も一緒だなあと痛切に感じた。「そして・・・猫を飼う」はそのあと谷口さんのおうちにやってきた猫のこと。犬から入った人にとって猫って身勝手な生き物って感じだろうなという思いをいつも持っているものだから、猫の飼い主としては、谷口さんの猫の受け入れ、猫の魅力の表現が嬉しい。そして軍用犬のはなし、「百年の系譜」。谷口さんのストーリー構成は愛情があふれていていいなあ。

リズと青い鳥

 周りの人の評判をきいての鑑賞。あとで「聲の形*1のスタッフ(京都アニメーション山田尚子監督)によるものと知る。細やかな良い作品を作っているな・・

リズと青い鳥」というお話をもとにした楽曲を演奏するオーケストラ部の女子高校生たち。映画「櫻の園」のような、さまざまな個性が行き交うけれど、それぞれが魅力的に描かれている手触りでもあり、あれよりもっと演じているおはなしと演奏者がリンクしていて楽曲の理解が実生活に影響を与えており・・肝になる音楽の表現も優れていてなかなかに良い時間を過ごせたと思う。

リズと青い鳥」のおはなしの部分、リズからみえている青い鳥の姿がなんとも可愛らしい。(それはそのままオーケストラ部の話につながっている。)そして、オーケストラ部員の中では剣崎梨々花さん。自分は懇親って割合苦手なので現実にこの世界に生きていたら懇親を求めてくる剣崎さんの申し出を断りそうな気もするけれど、群れたがるとかではなく、なんとかしないとと悩んでいる剣崎さんの姿にとてもほっとさせられるものがあった。剣崎さんに限らずチームメイトの個性をとても丁寧に描いている。

舞台は宇治のよう。

liz-bluebird.com

 

銀の匙 14

 

銀の匙 Silver Spoon 14 (少年サンデーコミックス)

銀の匙 Silver Spoon 14 (少年サンデーコミックス)

 

大量生産大量消費の高度成長期に育って、そのツケを実感しつつある按配の自分だが、今ほんとに自分のものは自分でつくることの尊さを感じている。もともとはそうだっただろう!という感じで。つくれるものを買うなんてばかばかしいという途中に出てくる農家の人のセリフがかっこいい。

肉の味についても出てくるが、確かに信頼おける生産者の肉はほんとに味が濃くて美味しいことを実感している。

のように、初老期の人間にもいろいろ考えさせてくれるのだけど、主人公たちはまだまだ手探りの高校三年生。主人公たちの失敗や成長とともに気楽に楽しみながら農業を身近に感じられる作品だ。

踊れトスカーナ!

 

踊れトスカーナ! [DVD]

踊れトスカーナ! [DVD]

 

vhs版にて。

 

ふや町映画タウンのおすすめの印がうってあって借りてみた。イタリア人男性だからみんな女性の扱いに慣れている、とか、女性として登場したら恋の悩みの相手は男性に決まっているとかいう勝手なステレオタイプをやんわり訂正してくれる、でもたとえば後者のはなしを大きなテーマとして扱うのでなく、ごく日常の中に、そうでしょ、という感じで混ぜこんであってそれが一層魅力的な作品。酒の席でハリキリすぎて顰蹙を買ってしまうような人物やマリファナ常用者たちやちょっと足りない感じの弟、信念ばかりの芸術家なども完全に肯定されていてとても気持ちがよい。フェリーニが描いている世界とも通じるような。。

百日紅

 

百日紅~Miss HOKUSAI~ [DVD]
 

ちょうどこの間みていた「北斎漫画」*1と重なる内容。こちらは北斎の娘、おえいさんを主人公にしていて、こちらのほうが浮世絵の世界との溶け込み方などもスムーズで美しくきれいにまとまっている。こちらと見比べると新藤監督のねっとりさがあぶり出される。

北斎漫画」で樋口可南子が演じていた北斎を惑わす女とこの映画に出てくるおえいより下の視覚障害のある娘、両方が「おなお」でその一致が気になったのだが、「北斎漫画」の方はお直、北斎の娘はお猶だったらしい。

原恵一監督はクレヨンしんちゃんの評判の良かったオトナ帝国*2や戦国ものの映画の監督さんなんだ。。これからは監督名でみていきそう。

春の饗宴

山本嘉治郎監督のミュージカル映画。ほっそりしている時代の轟夕起子と、笠置シヅ子の歌の場面が多い。笠置シヅ子はジャズの歌い手。音楽は服部良一。少し前テレビで笠置シヅ子の特集をしていたとき、ピンチの時、服部良一に励まされた話が出てきたなあ。*1

movie.walkerplus.com

*1:wikipediaにも載っている。「東京ブギウギ」なども服部氏の作曲。この映画でも出てくる。