シャイロックの子供たち

 

その昔横田濱夫さんという横浜銀行行員の「はみ出し銀行マン」という実録ものシリーズを好んで読んでいたことがある。内容は忘れたけどいつも取り澄ましている印象である銀行の生々しい裏側が面白く書かれていたことは確かだ。

ベニスの商人」のシャイロックについては、アル・パチーノの主演映画もみてますます同情したことも手伝い、一方的にこてんぱんにやっつける気に今のところなれないが、この映画は金貸し業である銀行の悪徳を面白く描いていて、「はみだし銀行マン」シリーズを楽しく読んでいた日々を思い出した。

中盤まで大げさな演技、滔々と決め台詞をまくしたてるようなシーンはほとんどなく、役者もそれぞれハマって、こんなことあるんだろうなあという空気がなかなか良い。中盤以降事件がさらけ出され登場人物たちがまとめみたいな聞かせる話をするところはちょっといただけなかったかな。気持ち良く収まりはするけれどちょっとそこで安っぽくなってしまうような。これ何なんだろうな、「マルサの女」なんかでは終盤の山﨑努のちょっと聞かせる話がなかなか良かったのに。どうすりゃいいんだ。。むしろ「仁義なき戦い」風に起きたことを淡々と見せナレーション使う方がシャープでかっこいいし上質にならないか?違うものになってしまうか。松竹系の映画だし動員狙う娯楽作としては現行の方が収まりがいいのだろうけど。いいセリフってほんと難しい。同じ阿部サダヲ主演のドラマ「不適切にもほどがある」ではそのくさくなるリスクをミュージカル仕立てにしてうまく消している。強い香味野菜でアクを消す感じ。

調べると映画版は原作やドラマ版には出てこないキャラクターが出てきたりしているらしい。原作は引き締まっているのかな?ちょっと興味がある。

監督の本木克英氏は「鴨川ホルモー*1なども担当とか。あちらも良い原作、愛すべきストーリー、ましてや京都のそれも身近な場所でロケもあっただけに否定しにくいけれど安易にまとめられ物足りない感じを持ってしまったな。